知ってしまうこと


朝起きると、隣に相馬がいるのが当たり前になった。俺が起きるといつも向こうが先に起きていて、いつものような何の感情も見せない笑顔をしている。
相馬はいつもそうだ。自分のことを隠し通す。何があっても、勿論情事中でもだ。だから今思えば、相馬が俺を好きだという随分前に知らされた事実は、初めてのこいつから明かされた自分のことだった。それに気付いた頃には、もうそれを素直に喜べるほど浅い関係でもなかったけど。

今日は珍しい日だった。相馬より俺が先に起きた。というか後ろから抱き着かれる形で眠られていて正直重い。そりゃ起きるだろ。

「ん…っ」

そして当然のように入ったままだ。別段こんなことで驚きもしないが、これを冷静に考えられるようになってしまった自分ももう駄目だなとは思う。とりあえず相馬ごと身体を反転させ、それを抜こうと試みることにした。早く起きて朝ご飯が食べたい。昨日はどちらかと言えば散々動いたのは相馬の方だったので、俺はあまり疲れていないが、微妙に自分の声が枯れていて微妙な気持ちになる。とにかく今日も仕事には変わらず、起きなくては。

「う、あ…っん」

ずりずりと自分から相馬のが引っこ抜かれていくのを直視するのは、視覚的に色々とまずかった。いや、ただ単に恥ずかしいだけだ。しかしこんな抜くだけの行為に気持ちいいと感じる俺はなんだ。相馬の所為だよな、うん、それでいいよもう。
抜けたら抜けたで腰まで抜けて、暫くベッドの上で襲われた快楽に身をよじる。ここ最近で大分見慣れた相馬の部屋。俺は相馬に好きと言われてから、知らない相馬をどんどん知らされる。例えば家の場所とか、お前が俺をどれだけ好きかとか、そんなこと。

「お前はいいよな」

何がいいかとは言わないが、それを言いたくて、そう言いたかっただけ。ここまで来て俺は相馬が好きなのかと問われても、いいえと即答するのだろう。好きにするには、何かがかなり違う。色々とな。
適当に服を引っつかみ、キッチンへと足を運ぶ。冷蔵庫のものは何を使ってもいいと最初に言われた。そしてこうも言われた。
何かを作ったら愛情も入れてね、と。
愛情なんて、入ってるようで入ってないものなんだろうな。一概に入ってないと言わないのは、俺も作り手側だからだ。

「今日は何食うんだ、相馬」

ベッドで寝息を立てる男に聞いても、当然の如く答えはない。だけど、

「博臣」

そう呼べばお前が跳ね起きることも、俺は知っているんだ。

(100522)

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