むりじい


「佐藤君が悪い」

それは自分への言い訳でしかなかった。突然家に押しかけて、目を丸くする彼を僕は無理矢理に腕を引いてベッドへ放り投げる。自分より身体の大きな佐藤君の抵抗も無視してこんなことが出来たのは自分でも不思議だったけど、おそらく今は憤りの方が大きかった。そうに違いない。
これから丁度バイトだったのか、羽織っていた上着を脱がせ、シャツの裾を捲る。まだ柔らかい乳首を爪で引っ掻くと、痛いのか彼の片手は殴ろうとして来たが、それも防いでやった。

「う、あ…っ」

けど君は違うよね。痛いのも好きなんでしょ。何故か判らないほど無意味な抵抗を続ける彼に口づけると、ぬめぬめして生温かくて、愛しかった。どうしてこんなにも僕は君を見ているのに君は僕は見てくれないのか。でも今は違う。僕だけを見て、僕だけを聞いて、僕だけを愛してよ。

「佐藤君、好き」
「やめっ、そま……ひっ」
「好きだよ」

やっぱり、愛だけはくれないや。腫れ上がるような突起を舐めながら、下肢に手を触れた。若干勃ち上がりつつあったそれを無視して、ベルトを取り去り、ボタンとジッパーを下ろしたところから手を入れては直に内股を触る。身体がびくびくと震えるのが判る。こうやってするのは久しぶりだ。
愛しいから触れること、君は気付かないままされるがままで、何も出来なくて。僕を見て、聞いてと言っても、そうしてはくれない。君は彼女が好きで、彼女が一番だから、僕はそこに入れない。それでも、無理矢理にでも入り込みたかった。

「あっ、ああ、やめぁ…!」

触れないでいたそこを下着ごとズボンを下ろした後に握り込む。完全に勃起していたそれは先端から射精でもしたのではと思うほど溢れるカウパーに舌なめずりをした。上下に摩り、裏筋を舐めるともう抵抗はない。ただ喘ぐその姿を眺めながら、とても女を抱けるようには見えなかった。好きでもない男に触られて喘ぐ浅ましい身体。そんな君を愛してる。

「きもちい?」
「うあ、も、いく…っから」

無理矢理搾り出したのような声の後、僕の手の中で射精され、飛散する精液。愛しい君のものかと思っていたら、いつの間にかそれを舐めていて、佐藤君に怯えたような顔をされた。心外だなあ。
そんな精液にまみれた指を滑らせ、後ろへと持っていく。萎えかけたそれがびくりと一瞬震えた。涙目な視線で僕を見る。君が僕を見ている。

「続き、していい?」
「だめだ」

そうして差し伸ばされた手は僕の頬に触れ、珍しい君からのキスで判る。だめと言った理由も、君に力で勝っていることも。今、こんな場所で君が笑っていることも。

「好きだ、相馬」

ハッとして目覚めると、視界には見慣れた天井があった。いつも通りにバイトをした昨晩は、二回目の佐藤君が轟さんと飲みに行った日。夢だったことに落胆と、自分の都合のいいこじつけに吐きそうだ。欲求不満のだだ漏れを感じながら、僕はため息をついた。
とりあえず下着を替えなければ、今日の仕事にはとても行けなかった。

(110729)

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