晴れ渡る空。
蝉が五月蝿く鳴いて、日差しをモロに受け輝く向日葵。
雲一つない、ある真夏の日の事。
このクソ暑い炎天下の中、汗だくだくになりながら男2人で歩いていた。
「暑い…暑いよー土方ぁ〜暑い…ねぇ、…暑いんだってばーひーじーかーたー」
「…だぁっ!うるせぇ!」
隣で猫背より酷い姿勢をとる坂田。
他校との練習試合をする為に、必要事項の書いてある紙を相手先に渡しに行かなければならない。
本来ならファックスで済むんだが、只今、絶賛故障中だ。田舎だから修理屋が来て、修理するのに時間もかかる。そんなのを、待っていたら練習試合が出来ない。
その所為で、部長である俺と、副部長の坂田が繰り出された訳だ。
因みにもう1人の副部長、総悟は完全なるサボりだ。
「少しくらい休もうよ!」
「何処に休む所があんだよ…」
ここはバス停やコンビニも全くないド田舎なのだ。それ以外には田畑が広がるのみ。休めるような所は無い。
「日陰…!」
「ねぇよ」
「土方のケチ!」
「俺の所為じゃねぇから」
「公園見付けたら休もう!」
「勝手に決めんな。夕方までなんだから、休む暇は無ェよ」
「勝手に決めんな」
「決めてねぇよ。向こうの顧問が夕方から出張だそうだ」
「はぁ?!ありえねぇぇえ」
「あぁ、もう!グダグダと…お前は蝉か!少しは黙って歩けえええ!」
ただでさえ暑いのに、喋ることで体温が上がり、コイツを相手にする事で更に体温の上昇だ。
坂田もそれは同じようで、漸く黙った。
2年の始め頃、総悟の発言により、俺が密かに好きだった相手…つまりは坂田に、好意がバレてしまった。でも坂田はみんなのいる前で、微笑んで「俺もだよ」と、そう言ったのだ。
それから俺らは部活…いやもう校内公認のカップルらしい。総悟曰く。
「あ!公園だぁ!」
嬉々とした坂田の声を聞いて、前を見ると確かに公園があった。
その公園は緑が沢山あって、木陰が出来、涼しそうだった。
「ぅ、わ?!」
いきなり、腕を引かれる。
坂田が俺の腕を掴み、公園へダッシュだ。自然と俺も走らなくてはならなくて。
「はぁはぁっ…」
「あっちィ〜」
「当たり前だ馬鹿!」
公園は逃げないのだから、ゆっくり歩けばいいものを、走ったりするから…
折角、汗をこれ以上かかないように…、とゆっくり歩いていたのに、その無駄に近い苦労が水の泡だ。
だが、炎天下よりは、幾分日差しは抑えられ、吹き抜ける風が涼しい。
「な、涼しいだろ?」
「…あぁ、そうだ、んっ」
肯定の意は最後まで言えず、坂田の唇に、塞がれた。
触れるだけの、優しく、淡いキス。
「何、すんだ馬鹿…」
「だって土方可愛いんだもん」
「は?」
「それにエロい」
「…何処がだよ」
尋ねると坂田はこれ以上無い程の笑顔で、
「何処って…まず、汗だくな所でしょ?髪の毛が顔に引っ付いてる感がマジ堪んねェし…」
と、語り出した。
「ワイシャツが胸元でくっついてんのも、堪んねェ…それにその熱で赤く染まった唇なんてもう比べモンになんないしね!ほんのり淡いピンク色のほっぺとか食べたいし…耳にもかぶりつきたい!暑いからっつって、第二ボタンまで開けてさ、誘ってるんですかーって感じでさァ…しかも、」
「ちょ、ちょっと待て坂田…」
「乳首が…って、何?今お前のエロさを、語ってやってんだけど」
「語るな!語らなくていいから、」
ひとまず、黙って
(違う熱が上昇してしまうから)
end.
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