場所は池袋。
久々の仕事オフ。
まあ趣味が仕事みたいなものだから、仕事自体は苦痛じゃない。て、いうか別に”仕事をしている”って気持ちはあんまりない。

今日池袋に来た理由はさしてない。ただ、フラフラと歩いていたら着いてしまったっていう感じ。
まあ、強いていうなら、会いたかっただけ。あいつに。


殺し合いの喧嘩ばっかりしてる、池袋最強のあの男に。



「やあ、臨也じゃないか」
「新羅…」
まさか、一発目に新羅に会うとは。珍しい、というか、奇跡と言ってもいいくらい珍しい。あ、結局珍しいことには変わりないか。
隣には、セルティが居る。うん、これはあんまり変わらないというか、日常だよね。

『またここに来てるのか?』
「いやだなあ、君までそんな風に言うなんて!ただ俺は歩いていただけなんだよ?大好きな人間を観察して、散歩をしてただーけ。なのにそんな言い方されると寂しいなあ。」
「臨也。セルティにそんなマンシンガントーク仕掛けないでよ。じゃあ僕達も忙しいから。じゃあ」

と、2人はさっさと消えた。
いや、そんなに俺を邪見にするなら声掛けなきゃいいのに。

とか思いつつ、また当てもなくフラフラし始める。あいつに会えるだろうと思いながら。







なんて、考えながら歩いてた。のに。

会えない。

会うのは、ドタチンとか、帝人くんとかで。



何で、今日に限って会いたいあいつに会えないんだよ。普段はいやってぐらい会うのに。
今日は、ついてなかったのかな。

仕方ない、と踵を返す。目的は新宿、自宅へと帰る為。




「…ぁーーーーーやあぁああああーーーーーーーー」


遠くから、あいつの声がした。
気のせいだと笑って、寧ろ自嘲して、歩き始めると、

"ガコンッ"

隣にゴミ箱が植え込まれた。勿論、地面に逆さまにずっぽりと。


振り返ると、そこには。今日一日会いたかったあいつ。
見た途端、火照る俺の顔。

(ああ…俺の顔正直すぎる…)

まあ、あいつには、俺が顔赤くても関係ないのは知っているけれど。
何せ鈍感だし、そもそも俺があいつを好きだなんて思わないだろうから。


「臨也くーん?なあにまた池袋に来てんだ、ああん?」
「は、ははっシズちゃん、それもう聞き飽きたよ?たまには違うことでも言ってみたら?」
「そりゃあ、手前もだろう?」

いつもと違う笑みで、いつもと同じ声のトーンで。不可思議なことを言い始めた。
俺が、たまに違うことでも言え、と?

「俺が何を言えっていうのさ」
「手前、俺に言いたいこと、あるんだろ?」
「な、なに…言って、」

シズちゃんが、シズちゃんの顔が、迫って…くる。
え、ちょっと待って何この展開。本当不可思議っていうか、意味不明なんですけど!

「ほら、臨也。言ってみろよ、俺によぉ」
「し、シズちゃん…?何か、キャラ違っ…!」

どうしていいか分からない。だって、シズちゃんの顔がもう、目の前にあるんだよ?
襟首持たれて喧嘩してるときの近さとは違う。シズちゃんの纏っている雰囲気が既に違うから、余計にドキドキする。
足も実はもうガクガク笑ってるんだよね。いろんな意味で。
しかもシズちゃんのあの声が、耳元で俺の名前を呼ぶんだ…
ああもう、これは、


「シズちゃんの、ばかああああ!!!」



逃げるしかないでしょ。


でも、言いたいことはたった一言なんだよ。






ひとこと
  (『好き』が言えなくて)






end.



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