捕まえた。

確かに誰かが背後でそう言った。そして、何かで頭を殴られて、俺の景色は真っ暗になった。















「ん…」


目が覚めると、目の前に真っ白な天井が広がっていた。

ああ、戻されたのか。ここに。



「サイケデリック、おはよう」

体を起こすと、隣に髪が左右に撥ねていて眼鏡の黒い服の人が寄って来て、そう言った。いやな笑顔だった。

「…」
「君は、自分がどんな存在か分かるかい?」
「…」

黙って首を横に振る。
自分がどんな存在か。分かってる。いや、知ってしまったんだ。だけど、その事を自分で言うのは避けたかった。ただただ、その事実を否定したくて。


「君は、ロボットなんだ。人のために歌う、そんなロボットさ」
「っ、」


ああ…やっぱり。信じたくなくてでも信じられなくて、否定してた事は真実で。泣きそうになる。

「まあ…そんな君が、この現実世界に存在している事は正直、謎だ。だけど君には何としてでも、戻って貰うよ、この中に、ね」
「…どうして」
「どうして?それはね、君が売れるか売れないかで、僕の会社の存続が決まるからだよ。それなのに、肝心の君がいなくちゃあ話しにならない!」
「あ、新しく…作れ、ば…?」
「残念ながら、そんな時間はないんだよ。だからサイケデリック、……早く戻りな」


先程までにこやかに笑っていた人が、急変した。
目つきは鋭くなり、顔から笑顔は消え…まるでそう、人形のように生きている"色"が無くなったような。そんな感じだった。


「何やってんの、早くしなよ」
「ゃ…」
「え?」
「やだ!俺は…戻りたく、ない!」
「何だ、と…? ふざけるな!このロボット風情が!」


押さえられながら、パソコンの前まで連れて来られたけど、その腕を振りほどき、そう叫んだ。すると、自分より大きな声で怒鳴られた。

だけど、だけど…俺はそれに怯えてる暇なんてない。


津軽と、また一緒に過ごしたいから


その気持ちで、もう一度…静かに拒否した。怯んだら、もう会えない気がして




「へぇ…そんな事言うんだ? …こんな事、したく無かったけど…仕方ないね。サイケデリック、これ…何か分かるだろう?」


黒い服が取り出したのは、一枚の写真だった。その写真は―――



「つがる…っ」



「そう津軽くんだ。君は彼と接触してしまった。」
「…」
「意味が分からないかい? なら分かりやすく端的に言おう。君がこの中に入らないのなら、津軽くんを殺す」
「っ!」
「素直に戻るなら…手を出すのはやめ――――」


「うるさい」


「サイケデリック…?」

「分かった。戻るよ…だけど!2つ約束して。」
「…それで君が戻るなら」
「ひとつ。あと一日、時間を頂戴」
「いいだろう。あと一つは何だい?」












「津軽に手を出したら俺は死ぬから」











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