『プログラミングは順調か?』
『はい。この調子なら…あと2、3日かと思われます』
『そうか。くれぐれも作業を怠るな。この商品は…我社の存続に関わる事だからな』


あの白い部屋。

黒い服を着た男が、2人。
よく解らない言葉を並べながら、パソコンに向かっていた。









『サイケデリック』














「いや…っ!」
「!…サイケ?どうした」

叫んで起き上がると、隣に津軽。震える俺の肩に優しく触れてくれる。

「こ、怖い夢を見たの…」
「夢?」
「うん…黒い、人たちが…俺の名前を呼んで、…それから、…っ」
「無理しなくていい」
「つがる…」

震えが酷くなってしまった俺を津軽はその暖かい腕で抱きしめてくれた。

「今日は泊まっていけ。俺が…傍にいる…から」
「ありがとう、津軽!」


こんな瞬間、津軽が好きだと思う。そしてその度に、胸がズキズキと痛む。理由は解らない…

「サイケ、ご飯にしよう」
「え、津軽の手作り?!」
「ああ勿論だ。何がいい?」
「んー…あ!オムライス!」
「分かった。ちょっと待ってろ」
「うん!」




あの黒い服の人たちは…俺の名前を呼んだ。パソコンに向かって。手を伸ばした。「サイケデリック」と、本名を呼んで…

どうしてパソコンなのだろう。

俺は、実在しているのに。何で…考えると苦しくなる。
考えるのを阻止するかのように。



もしかしたら、俺は―――












今生きている事の前提が、違うのかも知れない














それならば、津軽より有り得ない程の体温の差も俺があの部屋にいた事も、俺の記憶がない事も…すべてに説明が出来る。





出来て…しまうんだ…





「サイケ?泣いて…る、のか?」
「津軽…つがるぅ」


料理をしていた津軽に抱き着く。雰囲気で津軽はそう言った。

うん、きっと…泣いてる。君と立つ位置が、あまりにも違い過ぎた。


俺の心は泣いても、俺から涙は零れないんだよ、津軽…


だって俺は――――








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