本気で、死んでもいいと思ったんだ



















意識は混濁していて。

色々な思い出が頭を巡る。
そうか。これが、走馬灯ってやつか。ああ俺は死ぬのか。


少し。幸せを感じる。


だって、もうあの痛みを感じなくていいのだから。
シズちゃんに拒絶されるのが、ここまで、ひどく辛いなんて。思いもしなかった。


シズちゃんの前で倒れた俺は、シズちゃんによって殺されたのだろうか。それなら、尚更嬉しいんだけど。





「…ん、」



目が覚める。

ああ…また、死に損なったか。また、あの痛みを、苦しみを…味わなければいけないのか。



「…殺してよ、シズちゃん」



知ってたよ。

根が優しい君は、弱った俺を手に掛けるなんて非道な事…出来ないって。でもそれじゃあ、意味が無い。
シズちゃんの手で、殺されたかった。死にたかった。




ふ、と香る煙草の匂い。

ベッドの横に…



「え…シズちゃん…?」



シズちゃんがいた。俯いたまま、寝ているようで。
天井の雰囲気からここは、新羅の家だと、思ったんだけど…

シズちゃんは、一瞬肩を揺らすと…ゆっくり顔を持ち上げた。
あ…サングラスがない。…久々だなぁ、この蒼い目を見るのは。



「…」
「…」

互いに見つめ合ったまま何も言わない。
この沈黙がかなり辛い。

「や、やあ…シズちゃん」
「…」

俺が話掛けても、シズちゃんはずっと俺の目を見たまま。
話掛けるのは、やめとく。
何だか疲れて、視線を戻そうとしたその時…シズちゃんは動いた。


「え…なに、」


シズちゃんは俺を強く強く抱きしめる。
本当に…何なの…やめてよ、こんな思わせ振りな行動…

「好きだ、臨也」
「…は、?」
「手前が…好きなんだよ…っ」
「嘘、つくなよ…シズちゃんの同情なんか要らない!!」



ありえない言葉を紡ぐシズちゃんに、ありえないと突き放す。見えたシズちゃんの表情は少し、歪んでいた。


「臨也…本当、に」
「うるさいうるさい!もう黙って!!」
「臨也。もうその辺にしておけ」
「ドタチン…」


叫ぶと、ドタチンが部屋に入って来た。

「静雄な…本当に、お前が好きなんだよ」
そして有り得ない言葉を、ドタチンさえも紡ぐ。有り得ない、と否定しようとしたらドタチンは「人の話は最後まで聞け」と、制された。

「彼女も、お前と付き合えないと分かってたから…お前と似てる奴を片っ端から探して、付き合ってたんだと。プレゼントしたライターだって、使う度にお前を思い出してにやけて…その都度、上司に引かれるくらいだって。とにかく静雄は…お前とおなじように、高校時代から、お前が好きなんだよ。な、静雄?」


ドタチンが、シズちゃんの方を見て笑うから、吊られて俺もそっちを見てみる。と、信じられなかった。

シズちゃんは、耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうにしている。


―――ああ、本気なんだ


そう直感する。だってシズちゃん、そんな器用じゃないもんね。


「シズちゃん…俺ね、シズちゃんが…好きだよ。」
「…ああ、俺も…手前が好きだ」


そう言って抱きしめてくれるシズちゃんの腕の暖かさに涙が零れた。












抱合心中
  (窒息死しそうな程幸せ)






end.








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