具体的に何をしたら良いか分からなくて、手短な波江さんに聞いてみた。


「え?好きな人にどうアピールするかですって?」
「…うん」
「そうね…抱き着いてみたら?」
「はっ?だ、抱き着く?」
「そう。そして名前を呼ぶの。愛しそうに…誠二、って」
「まあ…ありがと」


弟談義が始まる前に、電話を切って、シズちゃんを探す。と、



「いーざぁーやぁぁあああ」



真後ろから凄い怒号と、自販機が飛んできた。あと2ミリ、右にいたら確実当たっていた。

でもこんなにタイミングがいいなんて…取り敢えず、波江さんに言われたように、抱き着いてみる事にする。




「なっ、臨っ手前ぇ…っ、」
「シズちゃん…?」




名前を呼んで、上目遣いでシズちゃんを見上げる。
サングラスがあって、目は見られないけど…こんなに近いなんて。
こんな近くでシズちゃんを感じられる事に少し幸せに浸っていると、


「気持ち悪ィ…ん、だ…よォ!!」


と投げ飛ばされた。

…でも、飛ばされる前に一瞬垣間見えた、照れた顔。少しは期待、しても…いいのかな?







次は、竜ヶ峰帝人君に聞いてみる事にする。まあ、ただ単に目の前にいたから、なんだけどね。深い理由は特にない。

「やあ」
「あ…臨也さん…」
「好きな人にアピールってさ、何したらいいと思う?」
「は?」
「だから、好きなら何したらいいかって話だよ」
「…プレゼント、じゃないですか?」


あ、以外と普通だ。
早急に帝人君とは別れて、プレゼントを探す。シズちゃんにあげて、捨てられずに使って貰えるようなもの…ライターでいっか。携帯灰皿は何か安っぽいし。











「しーずちゃん」


なるべくシンプルなのを選んで、シズちゃんを見つけ声をかける。
このライターが捨てられる事は目に見えてるけれど。でも、あげたいのも確かで。傷付くかもしれないけど、それなら、きっと諦めもつく。


「あ?臨也…手前ぇ…」
「ストップ。今は…喧嘩したくない。ただ、君にプレゼントしたいだけ」
「プレゼントだあ?」
「うんそう。爆弾じゃないよ?何なら俺もいるからここであけるといい」


…って俺どんだけ必死になんだか
シズちゃんは俺の言葉を聞いて、俺の手から小洒落た箱を手に取った。そして開ける。

「手前…これ俺の欲しかったライターじゃねえか…」
「えっ…そうなの?」
「…まあ、有り難く受け取るわ」


そう微笑むシズちゃん。

拒絶されて、諦めるはずだった、のに


――俺の欲しかったライター

――有り難く受け取る



ああやばいどうしよう。俺今本当に嬉し過ぎる。シズちゃんに否定されなかった事がこんなにも嬉しいなんて。しかも、プレゼントも、貰ってくれた。





「静雄?」


と、突然。
綺麗な声が聞こえた。

「あ、悪ィ今行く。…ライター、ありがとう…な」

「え、あ…うん」


シズちゃんは、綺麗な女性の隣まで、小走りで行った。そして…その人と、恋人繋ぎ。目の前が真っ白になった。



*








――甘楽さんが入室されました――

田中太郎:甘楽さん甘楽さん!
田中太郎:あの池袋最強の男が、
     付き合ってるんですよー

甘楽:勿論知ってますよぉ〜
   何時からでしたっけ?

田中太郎:確か…


















田中太郎:2週間前からみたいです













「ははっ…何だよ、アピールなんか…したって、無意味だったって事…」




パソコンのチャット画面は歪んで、見えなくなっていった。

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