「いぃぃぃざぁぁぁやぁぁぁああああ!!」
「ちょ、シズちゃん!それは反則だってば!」
「反則もくそもねえだろーがよぉ、臨也くんよぉおおお!!」


そう言って、俺の横をすれすれで自転車が飛んできた。ペダルが後頭部に当たりそうでちょっと寒気がした。俺は急いで、曲がり角を曲がってシズちゃんを撒こうとした。そして、実行。

のはずが、目の前は行き止まりで。

「え…マジかよ…」
「追い詰めたぞ、手前今日こそ死ねよ」
「断るよ、シズちゃん…」

振り返りながら一応、降参ポーズ。シズちゃんには利かないだろうけどね。

「あぁん?何だよ、そのポーズは」
やっぱりね…
「シズちゃん…これ、降参のポーズなんだよ?わかr…あ、ごっめーんわからないから聞いたんだよね!俺としたことが!」
「…やっぱり手前潰す。プチッと」
「無理でしょ!」
「ああ?」
「すいません」

こんな狭いところで、しかもシズちゃんの手によって死ぬなんてごめんだ。だからこの辺でちょっと下手に出ておかないとね。塀も高いから、ご自慢のパルクールは披露出来なさそうだし。

「あ」
「え、何」

突然。
胸倉を掴んでたのに、殴るでもなく、俺を落とすわけでもなく。何かを思い出したように声を出すシズちゃん。何でもいいけど、さっさと下ろしてほしい。


「かくれんぼしよう。」
「はあ?」
「で、勝ったほうが一つだけしたいことする。いいな?」
「え、ちょ、待っ「じゃあ俺が鬼やるから。お前隠れろ。」
「え、ちょ、シズty「いーち。にー。さーん…」

もうやだ!何なのこの単細胞馬鹿!!!
俺の台詞にことごとく被せてくるし、俺の意見は全く聞かないし。まあ、それは今に始まったことじゃないけどさ!!

でもあれか。シズちゃんにしてはいい考えかもね。
俺がシズちゃんに捕まる気なんてないし。俺を逃がしてくれるなんて、ね。

俺が素直に隠れる訳ないし。


まあ、とりあえず帰ろう。

このまま池袋にいて、シズちゃんに見つかって一つとはいえ、何かされるのはいやだし。俺が勝っても別にシズちゃんに何かしたいって訳じゃないし。


そして、俺は深く考えることをやめ、タクシーに乗った。






でも、少し嫌な予感がしたから、すぐには家に帰るのはやめた。
色々めぐって、たまにはいいかなとか思ってデパートで洋服を見てみたり、プライベート用の携帯が壊れていたからそれを修理にだしたりだとか、途中狩沢達に捕まって苛立つ台詞並べられたりだとかして。
家に帰るころにはもう、深夜になっていた。

「あー明日も仕事なのすっかり忘れてた。まあ、久々に楽しかったし、ちょっとだけ、シズちゃんに感謝かな。言葉だけ」

独り言をベラベラ並べて、エレベーターを降りる。

「っ!?」

と、そのとき。突然、後ろから口をふさがれた。
誰だ。ここ最近はこんな事されるような、危ないことはしていないのに…って、この服…


「見ィつけたぁ〜臨也くんよぉ」
「しうひゃん…」

やっぱり…。
こんな寒い日にワイシャツだけ見えるのなんて、シズちゃんくらいだ。


「じゃ、俺の勝ちな」
「え、ちょ」
「だって、手前、時間制限なんて決めてなかっただろ?」

…シズちゃんの癖に、生意気だ!反則だ!
だってそんなの、いつ池袋行っても、そこでシズちゃんに会ったら俺の負けって事じゃん…はめられた…。

「…仕方ないな。シズちゃんの一つしたい事って何さ。あ、でも命はあげられない…」



ちゅ



「俺が今手前にしてえのはこれだけだ。じゃあな」









え、なにそれ、ちょっと


シズちゃんの癖に…シズちゃんなのに、


ちょっとドキッとした俺がいる。






ずるい人
 (キスなんて、反則だ)








end.



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