静雄教師、臨也生徒
「折原、これ頼んだ」
ドサリ、俺の机の横に置かれたいくつもの資料。
「えーやだよ、先生」
「授業寝てたんだから、手伝え馬鹿!」
今度は、ゴンと拳骨で殴られる。結構痛い。
「もーシズちゃんてば、暴力的なんだから!」
「平和島だ。手前は言葉を慎め」
「……そういう先生もね」
俺は仕方なく、気だるく椅子から立ち上がり、資料を持った。
かなり重いんですけど…でも絶対言わない。言ったら馬鹿にされるから。先生なのにどこか抜けてるシズちゃんに馬鹿にされるなんて癪に障る。
「どこまで持っていくの?」
「あー?5階の資料室」
「げ…」
5階って…ここ1階だよ?わかってる?
そこまでこんな重いの持っていくとか…俺、か弱いんですけど…
とか思いつつ、もう3階まで上がってきた…
けど、もう限界。シズちゃんは先にスタスタ行っちゃうし…何だよ、畜生。
「はあ…」
「ほら、貸せ。半分」
「え?」
ふと、軽くなる。
横には、シズちゃん。
半分というか、大半をシズちゃんが持っていった。
「なんで…」
「あ?手前が遅ェからだろうが。ほら、軽くしてやったんだ、さっさと行くぞ」
「…シズちゃん」
こういう何気ない優しさが…好きだ。
俺とは犬猿の仲なのに…ね。なんで、そんな優しくするんだ、この
「馬鹿シズ」
「あ?何か言ったか?」
「別になんにもー」
資料を運んで終わり。かと思っていたら、整理も手伝わされた。
「折原は好きな奴とかいねえの」
「は?」
「だから、いないのかって」
「……いる、けど、何で」
「別に」
シーンとなる室内に耳が痛くて、何かちょっかいかけようとしたら先にシズちゃんに聞かれた。しかも、色恋沙汰。
びっくりした。女の子ならともかく、どうして俺に聞くんだ。
まあ…シズちゃんに、大意は無いんだろうけど。
「先生…好き」
「は?」
「……な人、いるよ…俺」
そうか、なんて言ってホッとしたような顔しないでよ。
本当は、本当は、
隠した本音
(大好きなんだ、シズちゃんが)
end.