見てしまった。



シェリ雪姫の自分の出番が全て終わったのですぐに着替えて、舞台袖から兄さん
達の演技を見ようと覗いた瞬間。

兄さんが、シェリアにキスをしていた。



頭が真っ白になってぐるぐるして吐きそうになった。

兄さんに再開して、たまに兄弟のスキンシップがあったり、兄さんの優しさに触
れて…恋をしていた。
兄さんに。同性に。
その事実は、簡単に世間に受け入れられるものじゃなかった。だけど、兄さんに
伝えなければ、別に構わないじゃないか。と自己完結し、今も想いは心に留めて
いた。


だけど、あんなシーンを見たら…もう駄目だった。


シェリアがずるいなんて、初めて思った。兄さんは鈍感だけど、何だかんだいっ
てシェリアとは良い雰囲気だ。
僕が持っていないものを、彼女は全て持っている。

勝てるはずがない








「ヒューバート」
「………何ですか」
「?怒ってるのか…?」
「いえ別に。それで、用件は」
「…シェリアに、」


頭が痛い。
兄さんからシェリアの名前が出るだけで苦しくなる。


あのシーンは、僕にとって最悪だった。一種のトラウマの様なものだ。

「おい、ヒューバート…大丈夫か?」
「え、ええ…大丈夫です。でも、気分が優れないので先に寝ます」



兄さんとは生憎、同じ部屋だ。というより3人部屋が取れない時は決まって兄さ
んと相部屋。
前までは良かったけれど、あんなシーンを見てからは苦痛でしかなかった。
部屋決め担当のマリク教官に、兄さんとは一緒にしないでくれと頼まなければ。


僕が、僕が兄さんから離れなければ、兄さんに嫌な想いをさせるし、僕も辛いか
ら。


僕は兄さんの傍には居られないんだ






ずるい
 (そんな事を思う権利さえ無い)




end.



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