「うぁー…」



ぐるぐる

目が回る。頭はズキズキと痛むし、なんか熱っぽいしやけに喉が痛い。
もう最悪だ。

喉が痛いのは喋らなきゃいいだけ。
熱も解熱剤飲めばすぐにひくからいい。


問題は、頭痛。


いくら頭痛薬を飲んでも、一向に収まらない。それどころか酷くなっているかもしれない。



「頭痛いよ…」



ぼそ、と

独り言を呟いても、今家には誰もいない。波江さんは「風邪?なら治ったら呼んで頂戴」と、早急に出て行った。


全く…酷い秘書だよ。

あまりの頭痛の酷さに、外に行くのも嫌で…とりあえず新羅に何とかしてくれと電話を入れた。





と、インターフォンが鳴る。


「開いてるよ」


そう言うと、開かれるドア。逆光で誰かは解らないが…明らかに新羅の身長ではないのは確か。

…この大きさは、



「手前…何してんだ」
「…やっぱり」



シズちゃんだった…
新羅の奴…絶対、あとで嵌めてやる。



「頭が痛いの」
「薬は?」
「効かない」
「…」
「何しに来たの」



幾ら恋人だからって…俺のこの頭痛が治るわけじゃない。
新羅も、何を思ってシズちゃんを寄越したんだか…



「…なに、」
「黙ってろ」




突然シズちゃんは近付いてきて。俺が座る隣に座ってきた。


「わっ」


そして肩を抱いて、思い切り引っ張られる…こいつ、俺頭痛いって言わなかったか?とちょっと苛立つと。すぐに。シズちゃんの大きな手がゆっくり俺の頭を撫でる。




「な、に…してんの」
「…こうしてりゃ、治るだろ」


ひたすら。ゆっくりと。
その手の動きはぎこちなくて。でも、そのぎこちない優しさが…嬉しくて。


「ばか…じゃないの…」


規則正しいその動きに、瞼を閉じた。




単細胞の介抱
 (酷く、優しい抱擁)








end.
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