「ねぇねぇ、キスしようよ」
「キス?別にいいけど」
初めは冗談のつもりだった。
雑誌の特集でキスを取り扱っていたから、なんとなく言ってみたくなった。だから別にしたいと思ったわけではない。なのに彼氏である青峰くんは冗談にも拘わらず、キスをするためにこちらへ迫ってきた。
「たまにはお前からキスしてこいよ」
「えっ?なんでよ」
「だっていつもオレからじゃねぇか」
そんなこと言うけど、いつも青峰くんが好きなタイミングでしてくるから仕方ないじゃん。
私からしようと思えば出来るけど…不意打ちとかならまだしも、言われてするのは少し恥ずかしいものがある。
「…目、瞑ってくれたら」
そう言うと青峰くんは素直に目を閉じた。うっわ…どうしよう。言ってはみたもののやっぱ緊張する。
とりあえず顔を近付けてみたが緊張は解けない。青峰くんが待ちきれなかったのか、目を瞑りながら「まだかよ」と言った。
心の中でカウントダウンをし、いよいよ残り五秒となった。
五、四、三、二……
三秒あたりで私も目を瞑り、距離を0にした。ほんの一瞬の出来事だったが、まだ恥ずかしさは解けなかった。
「顔近付けてくるとき、超可愛かったわ」
「目開けてたの!?」
「遅かったから待ちくたびれたし」
ばか!せっかく頑張ってたのに、途中で目開けるとか。恥ずかしすぎるよ…
すると次は青峰くんがキスをしてきた。触れるだけの温かいキス。しかも不意打ちだ。本人は余裕の表情だし…
今日から私も余裕でキス出来るように練習しなくちゃ!
241111▽慈愛とうつつ様提出