本棚の片隅にあったそれをそっと手に取ると、表紙は花と天使が描かれた絵本だった。


この本だけはやけに傷んでいて、ずっと昔から持っているかのようだった。


なんだか興味がわいて好奇心からページを捲ると、泣き虫な男の子がいつも一人で泣いている。

そこへ、表紙に描かれていた天使がやってきて、なんとか男の子を励まそうとする話の
天使の努力の甲斐があり、男の子は次第に笑顔を取り戻していく。


平穏な日々…と思ったのもつかの間、ある日天使は、何者かに羽をむしられて死んでしまう。


そこまで読んではた、と手が止まった。


可愛らしい児童書かと思ったが――違うのか。

これもロイの本なんだろうか。
ページを捲るたび、その付け根からちぎれてしまいそうなほど傷んでいる。

何度も、何度も、この本を読み返したのだろうか?


最後はどうなるのか気になり、ページを飛ばしてみると最後のページは破りとられてなくなっていた。


「……え」


「なに、これ……」


続きも気になるし、なくなったページのかわりに間に挟まっていた黒い羽。

微かに血がついている…






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