どこかで聴いたことがあるのに、
どうしても思い出せないメロディーがある。
少し悲しげで、儚くて、
心の底の深いところが小さく動く。
私は、この旋律を知っている。
いつも一人になると、ふと考えてしまうことがある。
あの日出会った名も知らない君は、
今どこで、何をしているのだろう
彼が落としていったペンダントを
今も私は持っている。
いつかまた、再び
あの月が赤くなったとき――
君に会えたら、渡したいと願っている。
*
彼にもう一度会って気付いたのは
彼にもう一度会いたかったのは、
ペンダントを返したいから以上に
彼のことが気になって仕方なかったから
どうして一人であんな場所にいたの?
月を見て泣いていたの?
顔に浮き上がった紋様も、
あなたがどんな身分であるかも、
無理に聞きたいとは思わないけれど
もし寂しくて、悲しくて泣いていたなら
その理由が、知りたかったんだ