Butterfly
――優しく触れて、壊して。





悲しいほど脆くて、痛いくらい眩しくて、
時折こうして、涙が出そうになるよ。

―そんな、君を見ていると。



どうして、もう飛べないと知っていて、
穴の空いた羽を動かして、じたばたと

それでも空へ向かって、触覚を伸ばしては
もがくことをやめないの?



陽の差さない、誰も見ていない
地底深くまで突き抜けた空洞。

その奥底から、君はまだ上を見ているね。

いつか必ず、外に出られる日がくると
信じて疑いもしないで。



笑ったりなんて、しないよ。

ただ涙が伝うのに気付きもしないほど、
君のその姿に僕は、ただただ目を奪われていたんだ。



――元に戻っていたはずの時計が、
再び時を失ったように。






君に出会うまでの僕は、退屈で幸せな
日々を送っていた。


「当たり前」に転がっていることを、
当たり前だと疑いもしないで

世界の隙間から、こちらを覗き込んでいた
本当の世界の姿にも、気付かないままでいた。



正しいことか、間違っていることかを
判断するほどの力も知識も持たないまま、

ごく自然にしてきたことを、これからも
当たり前に繰り返していくだけの日々。

そのはずだった。



穴に落ちて初めて知ったのは、
この世界に陽の差さない場所があるということ。

光の反対は必ずしも、影ではない。
それよりもっと深い、手の届かないほどの
闇が存在するのだということ。そして――



そんな痛みと隣り合わせだからこそ、
それに比例するように深く強く、

突き動かされる衝動のような、愛があるのだということ――。




(本当の苦しみも、痛みも
知らなかった僕は

本当の愛も、憎しみも
知らなかったように思うよ。


でも、それも、今となっては
なんの意味もない話。


君がそばにいないなら、
その感情の全ては
なんの価値も持たないから)



ほら、聴こえるかな

君が初めて 教えてくれた歌


君は僕に色んなものを与え、

そして、それ以上に 僕から

奪っていった。――



もしまた会えたら、ちゃんと伝えるよ


「殺したいほど、愛していた」と。




君に教わった愛で
これからどうやってでも
生きていけると思った


君に奪われた愛で
もうどうやっても
生きられないと思った



君のことで100回笑えた幸せがあるとしたら

君のことで1000回泣いた悲しみがある


それは1パーセントの自惚れと
残りの行き過ぎた誇大妄想



どんなに時間が経っても
消えない傷は

時間とともに痛みが増していくばかり



ねえ、迎えに行くから

今夜、私のために 死んでくれる?



私の一生ぶんの、愛と憎悪を
同時にあげる


心臓を握り潰すとき、

タイムリミットまで、あと36時間―――




「羽をむしった蝶は、飛べないのよ」

食われて終わるその瞬間を待つまで


断末魔/苦痛に喘いで
許しを乞うといい
(それだけが、僕の望み)







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