い を
――きっとそれは、始まりに過ぎない。



「…まだ起きていらしたんですか?」

振り返ると、女は首を傾げるようにして、申し訳なさそうにこちらを覗き込んでいた。
特に答えるでもなく前を向くと、空には小さく星が散らばっている。
「…ナガレボシが」
「流れ星!?」
言いかけた途端、ぱぁっと目を輝かせてこちらへやって来る。
「見えるんですか!?」
「見…えたらいいな、と思って」
「ああ…」
一瞬、そんなに嬉しそうに食い付いてくるとは思わず、思わせ振りな言動を取った罪悪感にも襲われたが、女は今の会話で自然に隣に腰を降ろすこととなった。最初の遠慮が溶け、さっきからずっと隣にいたかのように話し始める。

「私、流れ星見たことないんです。
今まで生きてきて一度も」
空を見上げたままの横顔は、懸命に星を見逃さまいとしているように見える。
それにつられるように空を見上げ、後ろ手に腰を据えた。
「アインスさんは?」
「……一度だけある」
そう言うと、女は…いや、リサはくるっとこっちを向いてぱちぱちと目を瞬かせた。
「えっあるんですか!?」
「と言っても、もうずっと昔の話だ」
過去のことを話しているとき、無意識にいつも俯いてるよ、とロイに言われた事を思い出し、いつの間にか足下へ下がっていた視線をぐっと上に上げた。
「施設にいた頃の訓練中、シチュエーション的には最悪だがな」
夜の森。人気のない木の海。
はぐれた仲間と死に物狂いで方角を探した、北極星のそのそばで、一瞬動いた光の影。

「目にも止まらぬ速さ、ほんの一瞬。
俺が見たのは残像程度だ。もう見たのかもわからない」
そう言うと、間髪入れず
「お願い事は?」
とリサが前のめりに訊ねてくる。
「は?」
「なんてお願いしたんですか?流れ星に」
「…願い?」
そんなもの、掛ける余裕もなかった。
そんな発想自体、その時にはない。
「例えば腕が生えてきますように、とでも願掛けすれば本当に生えてくるのか?」
と皮肉っぽく返と
「流れ星は惑星の浮遊物ですよ?
単なる物体にそんな力あるわけないじゃないですか」
と、「星に願いを」的ファンシーな話を先に振ってきたとは思えない、えらく科学的な見解を述べてきたので、少しムカついた。
が、





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -