叶わない夢を見よう


暗く、光の差さない海の底でたゆたっていた


いつしか僕は


叶わないから夢を見るのはやめた
目に映る全てのものを遮断したくて

長い間、目を閉じていたんだ


海の底で聞こえるのは
静かに蠢く波の音と

遠くで響いてる誰かの歌声


その声が明るければ明るいほど
優しければ優しいほど

ひどく悲しい気持ちになったのを
いまでも覚えている



“夢は、叶わないから夢なんだ”


誰かが僕にそう言った


涙が出たよ、嬉しかったのかはわからない


でもそれは僕にとって
小さな小さな慰めだった



苦しい時に聞きたい言葉は
いつもいつも希望の言葉だとは限らない


深い、海の底で思い出したのは
そんなつまらない、ひとりぼっちの独り言



もし、また夢を見られる日がきたら
この目を開けて、息をしてみようか



会いたい人はもういないけれど


今日も空が青い
それだけで、生きていける気がするのはどうしてかな




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