川瀬が私を呼び出すのは、決まってこの公園だった。
私が子どもの頃からあった、駅近くの小さな公園。
所々に生えているか細い木々に
弱々しくしがみつく、赤色に染まった葉っぱたちも
夜になるとその色彩はすっかり褪せて見えた。
人気のない公園内に、
錆び付いたブランコのキィ…という音がむなしく響いて
「侘びしい」という言葉の響きにぴったりな川瀬の貧相な背中が目に入る。
一歩一歩近付いていくと、川瀬は気付いて振り返り儚げに微笑んだ。
「来てくれたんだ」
「そりゃ、わざわざ近所まで来られたら来るしかないでしょ」
どこか嬉しそうな様子の川瀬にわざとそっけなく返して
2つあるブランコのうちもう一つに腰掛けた。
来る途中、自販機で買ったコーヒーを渡すと
川瀬はすっかりいつものように調子良く笑った。
「亜紀ちゃんやさしー。ありがと」
まだ温かいその缶コーヒーを一口飲んで、
「ゆりこと別れちゃった」
川瀬はまた始めみたいな弱々しい笑みを浮かべた。