「…またか」
ケータイの画面に浮かんだその文字に、思わず呟いた。
『今日はサービス残業になりました。』
普段から女の子らしい絵文字も一切ない、一行メールは当たり前。
バリバリのキャリアウーマンだってことも、サバサバした性格のわりに情に厚くて困っている人は放っておけない性格だってことも承知の上。
むしろ、そういうところに惹かれたはずだった。
……けど。
『今日が何の日か覚えてる?』
そう打ち込んで送信しようとして、やっぱりやめた。
今更それに気付いたところでどうなるんだろう。
子供みたいに感情を露わにして責めてみたところで、このむなしい気持ちが埋まるわけがない。
それに元々、こうなるんじゃないかって予感はなんとなくしていた。
さっさとケータイをしまい込み、仕事帰りの人で賑わう人混みをかきわけて、とりあえず酒を買いこむことに決める。
…そんな今日は、人生22度目の誕生日だった。