「は!?」
目が点になり、電話を落っことしそうになる。
とりあえず音量が凄まじいので少し耳から離した。
『今日お宅に伺う予定だとメールしたんですが!』
まくし立てるような大声は、聞き間違うはずのないキャリアウーマンの声だった。
『今日はサービス残業…』のメールの内容が脳内にちらつき、加えて喧嘩腰でこられると、こっちも怒らずにはいられなくなった。
「失礼ですがおかけ間違いじゃありませんか!?
そんなメールこちらは頂いた覚えございませんが!」
わざと敬語で言い返すと、向こうが口をつぐんだのがわかった。
電話越しにしばらく沈黙が走って、
『…本日17時から、お宅で祝辞披露のサービス残業が残っているんですが』
少し落ち着いた声でそう呟くのが聞こえた。
通話を終えてメールを確認すると、たしかに言われたとおり
『今日はサービス残業になりました。』
の文の後、スクロールしなければ見えない部分に
『内容はお宅で本日17時より、お祝い会です。サービスだから給料は出ませんが。』
と打ってあった。
「そんなの残業って言わないってのに。…ウソツキ」
独り言をこぼしながら、思わず頬を緩めた。今夜、君は月
キウイベア様に提出
(お題/月)
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