……僕の両親は、いつも僕をほったらかしだった。
父も母も研究職をしていて、寝る間も惜しんでいつも研究に没頭していた。
家にいる時間よりも、研究室にこもっている時間の方がうんと長かった。
僕がテストでいい点数を取るよりも、端から見れば不出来な実験のテスト結果の方を案じていた。
僕が何を考えているかより、どうすれば実験が成功するかを考えていた。
いつもさびしい思いをしながら、僕はひしひしと痛いくらいに感じていた。
――両親の“一番”は、僕じゃなかったんだと。
だからぼくは、自分で兄弟を作ろうと思った。
さびしいときは遊んでくれて、頭もいいから勉強も教えてくれて、お腹が空いたらごはんを作ってくれて…
いつも僕を「一番」に考えてくれる、そんなロボットを作ろうと思った。
それからぼくは、ロボットを作るための研究に没頭した。気づけば親の存在もどこかへ消えていた。
今は所在も知らないし、知りたいとも思わない。それはきっと向こうも同じだろう。
僕の両親は、二人の社会的な体裁のためだけに僕を「作った」のだから。
ロボットの研究をしている大学を卒業したにも関わらず、僕の実験はなかなか成功しなかった。
どうやら僕には、壊滅的にロボ作りの才能がなかったらしい。
人の面倒を見るどころか、むしろ安全性にすら問題があるようなポンコツロボットしか、僕の手からは生まれなかった。
そのせいで周りには変な目で見られて疎ましがられ、ときに大事になって逮捕されたりもした。
……でも、それも当然で仕方ないことだったんだろうな。だって自分自身が人として「失敗作」だったのだから。
でも、僕はロボットを作ることをどうしてもやめられなかった。
人になんて認められなくてもいいと開き直り、研究室に籠った。
人と関わってまた寂しい思いをするぐらいなら、一人でヘンテコな機械といる方がいい。本気でそう思った。
まるで両親と同じような、いや、それよりも酷い研究者になってしまっていた。
両親は人の役に立てるために研究をしていたけれど、僕は自分自身のためだけに研究を続けていたから。
こんな風に生きてきたものだから、今まで人間の友達は出来たことがなかった。まあ、作る気もなかったけれど。
――だけどそんなとき、君に出会った。
君をつれてきてくれたのも、ロボットだったんだよ。