…なんて、気付けばまた無意識に考えてしまうのは、
まだ時間があまり経っていないからかも知れない。
もう終わったことなのだから、考えるだけ無意味なのに。
せっかく身軽になった心が、また少し重くなる。
「毎度ありー」
たこ焼き屋台の店員の軽やかな声と、出来上がったたこ焼きのいい匂いがした。
……嘘だ、と思う。
本当はお腹なんて空いていない。
ただ、ぶつけどころを手放したせいでやり場がなくなったこの気持ちを、
どうすることもできないもどかしさで、
むやみに何かしてごまかしていたいだけ。
普通なら、どちらかと言えばショックで食欲をなくすところなのかも知れないけれど、
残念ながらそれとは逆なのもまた頑丈な自分らしいと言えば自分らしい。
「お客さん、大丈夫?」
手に温かい重みを感じる。
お金を払って無事に商品を受け取ると、店員はなぜかそう尋ねてきた。
私が顔を上げると、
そのベテランの風格が漂う中年の男性店員は間髪入れずに続ける。
「なんか、この世の終わりみたいな暗〜い顔してるけど」
「……私がですか?」
一瞬驚いてつい目を丸くしたあと、そう聞き返したけれど
答えは返ってこないままで
「元気出せよ、まだ若いんだから。
笑う門には福来たるって言うし!なっ!」
そう言う大きめの声と、明るい表情に映える白い歯が目に入った。