「あんた、ほんと学習能力ないよ」
「ごめん…」
「謝る相手は私じゃないでしょ」
「…ごめん」
「……」
きっと。
川瀬は学習能力がないわけじゃない。
たぶん本当にわかっていないんだろう。
…川瀬はきっと、
人を本気で好きになったことがないから。
好きな人からは一途に愛されたいし、自分も一途でいたい。
とか
そんな気持ちを、川瀬は知らない。
川瀬が私に謝るたびにそれを実感して、
そんな時いつも泣きたい衝動に駆られてきた。
…私は川瀬が好きだ。
だけど。
それをいまの川瀬に伝えても、
女からの誘いにNOとは言わない川瀬は2つ返事で「いいよ」と言って
今までの彼女みたいに振り回されて終わりだ。
「話はそれだけ?私もう行くね」
そう言って立ち上がる。
川瀬は顔を上げた。
「…もう行っちゃうの?」
「早く帰らないと終電なくなるよ」
「じゃあ亜紀ちゃん家に泊めてもらうよ」
この期に及んで川瀬は悪びれもなくそう言ってのける。
…腹が立つ。