きっとそうだろうな、と
ここに来る前から思ってはいた。
『今から来れる?公園』
川瀬が一言そう言って電話を切るときはいつも、「恋人」と別れたときだった。
「バイトの後輩といたの見られて…、そっからゆりこが怒っちゃって、フラレちゃった」
「あんたが思わせぶりなことするからじゃないの。
後輩と何もないなら別に…」
「気持ちは、ないよ」
川瀬の言い方になんだか違和感を覚えた。
「…気持ちは、って何?」
嫌な予感がして、眉をひそめ聞き返す。
「キスはした。…軽く」
「……」
呆れてものも言えなかった。
二言目の「軽く」というのは
川瀬なりの言い訳なんだろうけれど、
重かろうが軽かろうが事実は変わりがないのに、と腹が立った。
…これで一体何度目になるんだろう。
川瀬が全く同じ理由で彼女と別れたのは。
私の考えていることを悟ったのか、川瀬はさらに言い訳するかのように考えを口走る。
「でも、いきなり迫られたから、断ったら可哀相かなって思って…。」
「誰が可哀相なのよ」
「うーん……」
そう言って考えるように俯く。
その姿にため息しかでない。