「心さん!」

「ああ、お前か」


綺麗とはお世辞にも言えない空気の中、一人ぼんやりと歩いている心を見つけた。任務は終わったのか、マスクはつけていない。




私はこの世界に元々居た人間ではなく、いわゆるトリップというものをした。最初、この世界に来たばかりの頃、魔法使いが私をホールから来た人間と勘違いしたらしく追いかけ回され、挙げ句魔法を使われてしまった。しかし、魔法は確かに放たれ私に触れると思った瞬間に、なにか大きな「膜」が私を包んだ。覚悟していた痛みも変化もなく、不思議に思って目を開けると先ほどまで私を追い掛けていた魔法使いが目の前で倒れていた。
その目撃者が、心である。
私が目をぱちくりさせていると、一部始終を見ていた心が近付いてトンカチを振り上げた。背後から攻撃をされたので私は気付かなかったのだけれど、再び私の体全体を包む「膜」が現れたことにより何かされたのが分かった。心の行動に恐怖を覚えるよりも、自分の体の異変に戸惑わずにはいられなかった。
心は「一緒に来い」とだけ言って私に背を向けた。なにかされるんだろうかと考えたが、それなら腕を掴んで無理矢理連れて行くことも出来るはずだと自分を納得させて後に続いた。

着いた場所には、赤く長い髪を立たせおかしなマスクをした男がきのこに囲まれ佇んでいた。その異様な光景に動揺を隠せないでいると、隣にいる心に頭を撫でられた。優しいのか怖いのかよく分からない、それが第一印象だった。

煙(えん)と呼ばれた赤髪の男に向かって心が説明をしている様子をびくびくしながら見ていると、話終わったのか二人がこちらに目を向ける。心に後ろを向いてろと言われたので後ろを向くと、また「膜」が出来た。なにかされたんだろうか。

それから二人はまた何かを話し始めて、私はというと窓の外から羽の生えた動物が何匹か飛んでくるのを見ていた。珍しい生き物だなあと関心していると、その動物は私たちがいる部屋の中へと入ってくる。煙がその生き物に向かって話し掛けていたが、それに短く答えると私の前で立ち止まり小さい紙を差し出した。


「受け取れ」


煙に言われその後も次々と現れた生き物(悪魔というらしい)にも同じ小さな紙をもらった。


「悪魔が来たってことはお前も魔法使いなのか?」


だがお前みたいな魔法見たことがないと、表情の読み取れない顔で言われる。私はなにがなんだか分からなくて首を傾げることしか出来なかった。


それから色々あって今現在は煙の家に居候させてもらっている。私の「膜」は魔法なのかすら未だ分からなくて、健康診断という名の研究をされていた。心とは任務の時以外はほとんど一緒にいるので今では兄のような存在だ。研究について煙に取り合ってくれたけど、煙個人としても私の「膜」が気になるらしい。





「おい」

「なんですか心さん」

「突っ立ってねェで歩け。飯食いに行くぞ」

「あれ、能井さんは?」

「…たまには二人でもいいだろ」




とりあえず心さん大好きです。





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