太陽が沈んでいく。その光景を見ながら私は教室にいた。


「先輩」


聞き慣れた声、されどもう聞くことのない声。掠れた声の中に僅かな寂しさを感じた。
振り向いた先、彼――折原臨也は下を向いていてどんな表情をしているか分からない。


「卒業おめでとうございます」


呟くように言われ、それに私もありがとうと小さく応える。口元だけ見れば笑っているように見えた。


「先輩は大学にいかれるんですね」


やっと顔を上げたと思っても臨也をこちらを見ない。まるで私を、私の卒業を否定しているような。

臨也と私の関係はとても浅はかなものであったが、そこには確かに繋がりがあって、それこそ臨也と私の存在を点と点で結んであるような。友達でもなく恋人でもなく、ただの知り合い。ただの大切な、知り合い。


「俺が卒業したら」


不意に臨也が口を開く。臨也は窓の外、この時期に活動する部活はなく下校時間間近となったグランドは静かで風が吹いたときに木々のさわさわという音しか聞こえない、そんな様子をぼんやりと見ていた。私もグランドに視線を移し、ゆっくりと沈んでいく夕日に目を細めた。

彼がしていることを私は知っている。それは私が情報収集に優れているからではなく、単に彼が話してくれたから知っているのだ。


「先輩」


臨也に目を戻してみれば今度はちゃんとこちらを向いていて、深紅の瞳と視線が交錯した。


「俺が卒業したら」


臨也が近付く。


「迎えにいきますよ。先輩を」


感情が読めない顔。しかし、私の頬に触れた手が僅かに震えている。


「俺と一緒に来て下さい」





その一年後、彼は私の前から姿を消した。





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