「ふ、ぐぅうう」
「……」
私がくしゃみを必死に耐えていると、近くにいた雲雀がまるで不気味な物を見ているかのような目をした。
「んだコラ、なんか文句あんのか」
「…今のなに」
「呻き」
ズビーと潤いティッシュで鼻をかめば、止めどなく出てくる鼻水。あーつらい。鞄から目薬を取り出して挿している様子をじっと見てくる雲雀をうるうるの瞳で見つめ返す。
「だから何よ」
「花粉症?」
「そうだけど」
立ち上がって、窓を閉め、扉を閉めた。リモコンを取り出して空気清浄ボタンを押す。とりあえず後は時間が立つのを待つだけ。
「マスクは鼻を防備出来るけど、目がなぁ…」
「真っ赤だね」
「うさぎたんみたいでしょ?」
「モンスターの間違いじゃない」
雲雀がたいへん失礼な事を言ってきたので暇潰しに襲いかかろうとしたけど、この時期のハウスダストはハンパないので大人しくすることにした。代わりに鼻をかんだティッシュを雲雀の机に置く。「大事にしなよ…」と哀愁たっぷりに頭を撫でたらトンファーで瞬殺される。ティッシュが。
「雲雀ーつらいよー目が痒いよー」
「…そんなに辛いの?」
「うん…」
ぐじぐじ泣き出すと(半分以上は花粉のせい)さすがの雲雀も焦ったのか、私の目尻を優しく撫でる。
「眼鏡とかしてみたら?少しは対策になるんじゃない」
「……」
「名前?」
「……そうか」
雲雀の言葉で素晴らしい案を思いついた私は、風の速さで応接室を後にした。
次の日
「ということで、完全防備です!」
「僕は眼鏡って言ったよね。なんでゴーグルつけてるの」
「これで一切の花粉は私に届かない」
「しかも花粉用のゴーグルじゃなくて、なんで水泳用なの。馬鹿なんじゃないの」
なんか雲雀がさっきからいちゃもん付けてくるけど、華麗にスルーさせていただく。
生憎、花粉用ゴーグルを買うお金を持ち合わせていなかったので家にあった青い水泳用ゴーグルを付けて外に出た。視界はだいぶ青で埋め尽くされてしまったけれど、それよりも何よりも目が痒くならない事に喜びを感じる。
「ねぇ、恥ずかしいから僕の近くに寄らないで」
「なにが恥ずかしいの!わたしは今すごく幸せだよ!!」
結局、雲雀の財力により花粉用ゴーグルを買っていただきました。