朝、気だるい体をなんとか起こして学校へ向かう支度を整える。休み明けの月曜日でもなく火曜日でもなく、そろそろ疲れが出てくる水曜日。なんとなく気分は憂鬱である。
「はよー山本」
「よっ!」
バス停で山本を見つけ声をかけると爽やかな笑顔を見せながら挨拶を返された。私はいつもこの時間帯のバスに乗るが、その時山本がいることはめったにない。
「今日は朝練ないの?」
「おう、テスト前だからな」
「そっか。なんか微妙な気持ちだね」
「そうか?」
そうこう話している間にバスが到着し二人して乗り込むと、これまた見知った顔が珍しく座席に腰かけていた。
「獄寺くんがいる」
「珍しいな」
私よりも後に続いた山本に声をかけて、さて私たちも座ろうとバスの中を見渡し、迷う。どこに座ろうか。
後ろを振り向いて山本の意見を聞こうとすれば、既に山本は優先席にて腰を降ろしていた。
あれ、座っちゃってる。なんて軽くショックをうけていると獄寺くんが私に気づき、二人席を一人で占領していたが窓側にわざわざ詰めてくれた。
しかし私は何を思ったかそのまま獄寺くんをスルーして一番奥の座席に座った。
そしてハッと気付いた。
「(もしかして獄寺くんは私が隣に座るのを待っていたのでは…?)」
「……という夢を見た」
「ハハハ!お前ひどいのな!」
「何言ってんの?ぜんぶ山本が引金だよ。山本のせいで獄寺くんが傷付いちゃったんだよ!?」
「うるせェよお前ら!!全部丸聞こえなんだよ!」
「なんか悪かったな、獄寺」
「今度こそは隣に座ってあげるからね」
「夢の話だろうがああああ」