「ありゃりゃ、夏野寝ちゃった?」



おぼんを片手に持った徹ちゃんが部屋に戻ってきた。「最近寝不足だったからね」と答えれば徹ちゃんは頷いて、私に冷えたお茶が入ったコップを渡す。



「徹ちゃんさ、知ってる?」

「ん?なにを?」

「明日兼正にとうとう人が来るらしいよ」

「へえー!やっと来るのかー」



どんな人なんだろうな、と言って徹ちゃんはもう一つのコントローラーを取り出す。私と対戦するつもりなんだろう。その光景をぼんやりと眺めながら、なんだか私は切なくなった。こんなに優しくて暖かい人なのに、なんであんなに追い詰められなくちゃいけないんだろう。彼がなにをしたっていうんだろう。こんなことを考えても無駄だと分かってはいるが、考えざるを負えなかった。だって私は全てを知っていて、なのになにもしようとはしていない。私はこの物語に関わることのなかった人間だからこそ、なにもしてはいけないのだ。
悶々と思考を巡らせていると頬に冷たい感触が走り我に返る。



「あ…」

「なにぼーっとしてるんだよ。名前も寝不足かー?」

「違うよっ」

「それより早くやろうぜ」



私の手にコントローラーを押し付けて、徹ちゃんは画面に向き直った。どうやらコップを頬にあてられたらしい。始まるぞーと言われて私も画面を見る。徹ちゃんはゲームに強いから私も負けないために、先ほどまでの思考を飛ばした。






(日は沈む)




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