「先生は、どんな人たちが兼正にくると思います?」

「んー変わったやつ」



なんてったってこんな田舎の城に住むんだもんなあと言って先生は笑った。あながち間違ってはいないけど、根本的には違う。先生はその「変わったやつ」によって村が死にかけるなんて思いもしないだろう。私だってトリップ前に漫画を読んでいなかったらこんな平和な村に死が充満するなんて思わない。



「名前」

「なんですか?」

「このまま俺と病院に来るのか?」

「うーん、そうですね。ちょっと顔出していきます」



そうか、と先生は私の手を取って歩き出す。
この外場村に来たばかりの頃、都会の平坦な道とは違って所々にでこぼこがあったり大きな石が落ちていたりと、慣れていない私は何度も転んだ。そこに偶然通りかかったのが尾崎先生で、それが私と先生の出会い。先生はもう転ばないようにと私と手を繋いで病院まで連れ来てくれた。まだ村に馴染めていなかった私にとってあの時の先生はどんなに心強かったか。



「流石にもう転びませんよ」

「名前のことだ、なにしでかすか分からないだろ」

「馬鹿にしてます?」



ぎゅっと力いっぱい先生の手を握っても、痛くない痛くないと笑われてしまった。ちくしょうめ。



「名前ちゃーん!」



病院の近くまで来ると遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。この声は律っちゃんだ。笑顔で駆け寄ってくる律っちゃんを見て、私の頬も緩む(先生に気色悪いと言われた)



「律っちゃん!」

「久し振りだね!先生が帰ってきたと思ったら名前ちゃんまで居るんだもの」

「静信さんに追い出されちゃったの。尾崎先生のせいで」

「えっ!先生なにしたんですか!」

「そのことについては名前の自業自得だな」



律っちゃんが来たことによって自然と繋いでいた手は解かれて、今はそれぞれの位置にある。そのことが少しだけ寂しいと感じたのは私の気のせいだろうか。






(支え)







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