「とっ!徹ちゃーん!!」



大雨は相変わらず続いていて、病院を出た私は武藤家の前に来ていた。小さめの石ころを掴んで窓に当てる。雨風のせいで一回どもってしまった。



「うわあ名前!?なんでそんなとこにいるんだよ!」

「中いれてー!!」









びしょ濡れになった私を徹ちゃんは急いで中に入れてくれた。
家には葵も保もいて、全身ずぶ濡れの私を見て風邪引くからとお風呂にも入らせていただいた。ありがたい…。



「徹ちゃーん」

「おっ!ちゃんと暖まったか?」

「うん。ありがとね、葵にも保にも感謝!」



徹ちゃんの部屋に来る前にちゃんと二人にはお礼を言っておいた。
優しい兄弟たちがいて羨ましいなって前に話したら、結婚したら兄弟になれるぞっと冗談半分で言われたことがあるのを思い出した。それもいいかもしれない、なんて。



「なぁ、なんでレインコート持ってたのにびしょ濡れだったんだ?」

「んーとね、最初はちゃんと着てたんだけど、いきなり強い風が吹いて、帽子がとれて、顔がびっしゃびしゃになっちゃったから、もういいかなって」

「なんもよくないから!ていうか、なんで外出たんだよっ」

「いろいろ用があってさ。それはそうと今日泊まりたい」

「はあ!?」

「いや、もう眠くて…帰る気失せた……」

「いやいやいや!泊まるにしても葵の部屋だろ!ちょ、布団に入らない!」



最後の方は徹ちゃんの声が遠くなって聞こえなかった。やっぱりここはすごく安心出来る。本当の家族みたいに暖かくて、夏野の傍ももちろん好きだけど、徹ちゃんの家もすごく好きだ。

そのまま沈んでいく意識に心地よさを感じながら、私は今日という日を終えた。









(安心)














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