「ふう…」



あれから数日経って、今日は調理実習。
寝ぼけ眼を擦りながら通学路を歩いた。私がいるクラスは京子ちゃんや花、獄寺くんに山本くん、そして沢田くんというメインキャストが勢揃いのなんとも濃いクラスだ。京子ちゃんや花とは中々の仲良しで、よく一緒にいることが多い。

だからこそ問題に巻き込まれる確率が高いのだけど、話は合うし何より一緒にいて安心できる。それに、今までずっとぎりぎりでだけど、巻き込まれないように回避出来ているからこの先も大丈夫だと思う。



「名前ちゃん!おはよう!」

「おはよう京子ちゃん。眠いねー」

「今日は調理実習があるから、楽しみで目が覚めちゃった!」

「そうだったね、おにぎりだっけ?」

「うん!名前ちゃんは家から具とか持ってきたの?」

「一応シーチキンは持ってきたよ。梅干し食べれないから、その代わりとして」

「そうなんだ…」



京子ちゃんが羨ましそうな顔をしていたから、「余分に作って食べよっか」と提案したら嬉しそうに頷いていた。それから一緒に教室まで行って、いつも通り花と京子ちゃんと三人で会話をする。








「それではみなさん、出来ましたか?」



先生の言葉に、はーいと女子特有の高い声が一斉に答える。女子はそれぞれ自分が作ったおにぎりを三個ずつ持って男子にあげるという、なんとも変わった行事だ。

みんながおにぎりを持って緊張している中、私は余分のおにぎりをせっせと作っていた。もう京子ちゃんや花の分は出来ていて、あとは自分の分だけだったのだけれど具が余ってしまったので予想していたよりも多く作ることになってしまったのだ。

食べきれなかったら持って帰ればいいし、食費代も浮く。別にお金に困ってる訳ではないけど、誰のお金かも分からないのに、そのお金を使って生活しているのは変なかんじだった。



「名前ちゃん、できた?」

「あとちょっと!京子ちゃん先に渡してきちゃっていいよ」

「うん、わかった!じゃあ行ってくるね」



京子ちゃんが前を向いた瞬間、視界に何かが映った。ちらりと見てみればそれはビアンキで、ああやっぱりなと思った。
別にビアンキが京子ちゃんに何か危害を加えるわけじゃないから、私は私で残りのおにぎり作りに専念する。



「ふう、終わった!」



やっと作り終えて、周りを見渡せば沢田くんが全てのおにぎりを食べ尽くしているところだった。私は急いで出来上がったおにぎりを鞄に詰めて隠した。私の大事なおにぎりを食べられては困る。



「なあ苗字」



みんながぎゃーぎゃー騒いでいる中、山本が私に近寄ってきた。恥ずかしそうに頭を掻いている姿に、可愛いなと思ってしまうのはこの際仕方がないことだ。



「どうしたの?」

「あのさ!苗字ってまだおにぎり残ってたりしねえ?」

「え、」

「いや、別に責めるわけじゃねえんだけどさ、ツナが全部食っちまったろ?さっき女子が並んでるところに苗字はいなかったからさ、もしかしたらと思ってよ!」

「うん、あるよ。食べる?」

「ほんとか?悪ぃな!部活あるから保たねえんだ〜」

「いえいえ、ツナマヨでいい?」

「おうっ!」



山本くんは嬉しそうに私のおにぎりを受け取っていた。大切に食うな!と言われたけど、温かいうちに食べた方がいいよと言ったらそれもそうなのな!と言って、爽やかに笑っていた。

山本くんはスポーツも出来て、みんなに優しいから男女共に人気だ。笑顔が太陽みたいなところも素敵だと思う。



「…い、おい」

「え?」



山本くんに手を振っていたら後ろから声をかけられた。この声はと思って振り返ると予想通り獄寺くんが立っていた。しかもすごい形相、めちゃくちゃ睨まれている。



「よこせ」

「…なにを?」



何がほしいのかは分かっていたけど、頼み方が命令口調だったからわざと聞き返した。獄寺くんは眉間にしわを増やして、目を泳がせながら言った。



「…にぎり飯」

「食べたかったの?」

「っ…うるせえな!いいからよこせ!!」

「わかったから、ツナマヨでいい?」



顔を真っ赤にしながら逆ギレした獄寺くんに、やれやれと思いながらも聞いてみると、顔を逸らしながら小さく頷いた。山本くんと同じように二つのおにぎりを渡すとさっさと教室を出て行ってしまった。






(さすがツンデレ)











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