屋上へと続く扉を開け放つと、心地よい爽やかな風が私を包んだ。それに目を瞑って大きく深呼吸をする。
よし、いざ雲雀さんの元へ!



「…あれ?」



雲雀さんがよく出没する場所として一般生徒はあまり屋上に来ない。だからこそ扉を開ければ直ぐに見つかると思っていたのだが、辺りを見渡しても雲雀さんらしい黒は見当たらなかった。

いなかったことに若干安堵しながらも、久々の屋上からの景色を堪能しようとゆっくり足を踏み出す。
フェンス越しに見える眼下の風景は教室から見るのとまた違う新鮮さがあって心が踊った。雲雀さんはいつもこの景色を独り占めしてるのかと思うと、少し羨ましく思う。



「んーっ!」



すっかり夏色に染まった抜けるような空の青さに大きく伸びをする。なんて気持ちがいいんだろう。さて、ここには雲雀さんがいないようだからそろそろ出るとするか。
そう思って踵を返すと給水タンクの近くに黒いなにかが動くのが見えた。



「やあ」

「ひ、雲雀さん!」



いつからいたのだろうか、きっとその答えは最初からだと思う。雲雀さんは眠そうに大きく欠伸をしてから再び私を捉えて緩く微笑んだ。
睡眠の邪魔をしてしまった私に怒っているだろうか、確か葉が落ちる音でも起きてしまう雲雀さんのことだから屋上のドアを開けた時から気付いていたのかもしれない。



「何か用?」

「あっ!その…」



雲雀さんの声で我に返って、急いで鞄の中にある目的のものを取り出した。



「リボン、ありがとうございました」

「……」

「あの、返すの遅くなって申し訳ないです」

「こっちで渡したら?」



こっち、と指されたのは屋上よりも高い位置に備えられている給水タンクのある場所。つまり雲雀さんが今いる場所。
まあ普通に考えて今私がいる所から雲雀さんにリボンを渡すには遠くて、手を伸ばしだって届くかどうか。
そうなれば誰だって近くに来いって言うよね!そう自分に言い聞かせて足を踏み出した。







(緊張)










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