「よく来たな名前」



昼休み、沢田くんに連れられて屋上へとやって来た私に浴びせられた一言は歓迎の言葉だった。



「来なきゃなにされるか分からないしね」

「よく分かってるじゃねーか」



今日の空はまた素晴らしく綺麗で、雲が絵に描いたように散りばめられている。リボーンは私の嫌味を軽く受け流してニヤリと笑った。それも承知の上で言った事ではあったが、実際やられると少々腹立つものがある。



「リボーンさん…?そいつは関係ないじゃないですか?」



声がした方に目を向けると、困惑した獄寺くんが私のことを震える指でさしていた。



「関係なくねーぞ。名前もれっきとしたファミリーだからな」

「はあっ!?」



いつものようにリボーンが飄々と言ってのけると、沢田くんが大きな声を上げた。沢田くんも知らなかったのか。てっきり私は沢田くんだけになら話してあるとばかり思っていたのでそこだけは少し驚いた。



「まーまー、いいじゃねぇか!仲間が増えるだけだろ?しかも苗字ならラッキーだしな!」

「さすが山本だな。お前らも山本を見習え」



そう言ってぴょんっと山本くんの肩に乗ったリボーンは、私の方へ振り向いて「ぼーっとしてんじゃねぇぞ」と銃を向けた。



「自己紹介だっけ?」

「分かってんならとっととやれ」

「……えと、苗字名前です。リボーンに恐喝されてファミリーに入りました。詳しいことはリボーンに聞いて下さい」

「面倒事を押し付けてんじゃねーぞ」

「だって私から説明するよりリボーンの口から説明した方がみんな納得するじゃない」



とくに獄寺くんが、とは言わないでおいた。ダイナマイトなんか投げられたら一溜まりもない。リボーンは銃をスーツにしまってから獄寺くんと目を合わせた。



「名前は俺が気にいったから入れた」

「え、それだけ?」



沢田くんの的確なツッコミに関心しながらも、なぜリボーンが私を選んだ理由を話さないのか考えていた。私の推測だけど、彼はまだ私がどういう人物か正確に把握しきれていないからだと思う。ファミリーの話を持ち掛けてきたときも同じ様なことを考えたなと今更思い出した。



「よろしくな苗字!」

「うん、よろしくね」



警戒心バリバリの獄寺くんに対して、山本くんは私を受け入れてくれたみたいで握手を求められた。差し出された手を握り返すと「この前のおにぎり、ありがとうな。上手かったぜ」と、爽やかな笑顔付きで言われた。



「いえいえそんなこちらこそありがとうございます」

「意味分かんねーぞ」



山本くんの笑顔に照れて自分でも訳の分からないことを言ってしまった(リボーンのツッコミは聞かなかったことにする)。握られた手を名残惜しくも離して、沢田くんと目を合わせた。



「あ…お、俺も、これからよろしくね」

「私こそよろしくお願いします、十代目!」

「え」

「なっ!気安く呼んでんじゃねぇ!」



私の発言によって固まっている沢田くんを尻目に、さっきから私を睨み続けている獄寺くんに向き直る。



「獄寺くん」

「んだよ。俺は認めねぇからな」

「獄寺くんのことさ、隼人くんって呼んでいい?」

「はあっ?」

「ファミリーの印ってことで一つ!」



ポカンと口を開けた獄寺くんに対し私は楽しくてさっきから頬が緩みっぱなしだ。ボンゴレに入れたこととファミリーとして三人と対面出来たことが重なって私は今最高にテンションが高い。そのせいで若干馴れ馴れしくなってはいるが、今までずっと我慢してきたことなのでそれも仕方ないと思う。



「ダメかな?」

「なんで今更…」

「お願いっ!」

「………別に、勝手にしろ」



けど俺は認めたわけじゃねえと付け加えてから、渋々了承してくれた獄寺くんもとい、隼人くんは照れた様にぷいっとそっぽを向いた。めちゃくちゃ可愛いと思うのは私だけなんだろうか。



「獄寺だけズリー!俺も名前で呼んでくれよ!」

「武くん!」

「うわ、なんか嬉しいのな」

「沢田くんのことはツナって呼んでいい?」

「あ、うん。俺もその方が…」

「じゃあ苗字も今日から名前な!」

「もちろん!なんか、ファミリーってかんじだね」



緩んだ頬をさらに緩ませて笑うと、みんなもつられたように笑っていた。名前呼びだけでこんなにも親しくなったような気がするのは気のせいなんだろうか。いや、気のせいだと思いたくない。
思えば私は不安だったのだ。私を知っている人なんか誰もいなくて頼れる家族だっていない。そんなところへ放り出されて、知らぬ間に時間も過ぎていって友達も知り合いもたくさん出来たけれど、ずっと不安だった。でもリボーンが来て、私は関わり合いになるつもりはなかったけど、なりたくなかったけど、今はリボーンと関われてよかったと思う。例えマフィアという物騒なファミリーに入れられたとしても、繋がりが出来たことには変わりない。これから私は、私らしく。前に進むしかない。いつ元の世界に帰れるか分からないけど、このREBORNの世界も悪くない気がする。







(覚悟と繋がり)






2011.01.20





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