「あ、気が付いた?」



まどろみから一気に意識が浮上する。声がした方に視線だけ向けてみれば、そこには白衣を纏った医者らしき男がこちらを見ていた。



「いやー普通だったら満身創痍、阿鼻叫喚(あびきょうかん)は確実なのによく軽い怪我だけで済んだね。君はセルティと同じ類なのかな?」



なんて冗談だけど、と言って笑った男は立ち上がり奥の部屋のドアを叩いた。



「セルティー?目を覚ましたよ」



ガチャリとドアが開き、中からライダースーツを着た女性が現れた。変わったヘルメットを被っていて、それが更に妖しげな雰囲気を醸し出している。



「僕の名前は岸谷新羅。彼女はセルティだよ」



岸谷新羅と名乗る男が私に向き直りその女性、セルティを紹介した。セルティと呼ばれた女性は携帯(PDAというらしい)に何かを打ち込むと私の前に差し出した。



『セルティ・ストゥルルソンだ。よろしくね』

「あ、苗字名前です。宜しくお願いします」



差し出された手を握り、軽く微笑むと、セルティさんの雰囲気が柔らかくなった気がした(実際はヘルメットで表情は見えないけど)

私はこの二人も知っている。

一方的に知っているというのは何だか変なかんじだ。表面上では今知り合ったばかりの私たちだが、私はここに来る前からこの二人、いや言ってしまえばこの世界のことを認識していた。しかしそれはあくまで間接的であって実際には会ったこともなければ見たこともない。そんな存在が今目の前にいる。
そして私は理解する、ここは私のいた世界ではないと。






(真実?)










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