「名前!」



セルティが静雄と連絡を取り、待ち合わせ場所の公園に先についた私たちは静雄が到着するのを待っていた。

何分かして、息を切らしながら私の名前を呼ぶ静雄が現れた。



「おまっ…何処にいたんだよ!」



腕を引かれ一気に静雄に抱きしめられる。余程心配してくれたのか、静雄の体からはほんのり汗の匂いがした。

静雄の気持ちが嬉しくて、私の腕も静雄の背中に回した。それに気付いたのか、先ほどよりも私を抱く力が強まる。
目を閉じ身を任せていたが、次第に強くなる腕の力に苦しくなっていく。



「しっ、静雄さ…ちょ、くるしっ…!」

「…」

『静雄!そろそろ離してやれ!白目向いてるぞ!』



セルティが焦りながらも、私から静雄を剥がそうと静雄の肩を掴んだ。それにハッとしたのか、今まで私を絞めていた苦しみがなくなる。



「悪い…大丈夫か?」

「だ、だい、じょうぶです…」



ゼーハーと息を吐いて、呼吸を整える。静雄に目をやれば心配そうにこちらを見ていた。加減が分からなくてつい油断してしまったんだろうな、そう思った。



「ほんとに大丈夫ですよ。それに、私が勝手にいなくなったのが元々の原因なんですから」

「いや…お前がそこまで思い詰めてたのに、気付かない俺が悪い」

「えっ違いますよ!ただ、迷惑かけちゃうし、私も私で自立する時なのかもって思っただけで…」



眉を潜める静雄に笑いかける。自立については静雄に自分を責めてほしくなくて、とってつけた嘘だ。
それよりも、私が気になったのは静雄が私に対する接し方だ。アニメとか小説を見る限り、突っ張っていて寂しさを見せない素振りをしていたのに、今目の前にいる静雄は私を心配してくれて抱きしめてくれて、まるで親子や恋人のよう。それだけ心を許して、懐いてくれているということなのだろうか。



『名前がああ言っているんだ。もういいんじゃないか』

「セルティ…」

「そうですよ!それより、静雄さん今日お仕事は?」



セルティの言葉に若干元気を取り戻した静雄に、気になっていた疑問をぶつけた。



「今日は午後からだから、まだ大丈夫だ」

「え?午後からって…」



携帯をぱかりと開いて時間を確かめる。時刻は12時30分を示していた。
静雄も私の携帯を覗き込んで時間を確認する。途端に青ざめる顔。



「やべえ…もうそんな時間か?トムさんに迷惑かけちまう!」

「まあまあ落ち着いて!セルティに送ってもらえばいいんじゃないですか?」



ほら、バイクですし。と、慌てだした静雄に笑いかければ、少し落ち着いたのかセルティに視線を移す。セルティは運び屋だし、なにより優しい性格だから快く引き受けてくれると思った。



『それは構わないけど、名前』

「なんですか?」

『ここから動くなよ。お前は直ぐどこかにフラフラ行ってしまうからな』

「大丈夫ですよーどこにも行きません!あ、だったら連絡先交換しておきませんか?これからなにかと便利でしょうし」



今のところ臨也の連絡先しか入っていない携帯を指さす。セルティも名案だとばかりに嬉しそうなオーラを振りまいた。

ついでにヘルメットを被った静雄とも連絡先を交換して、二人は公園を去っていった。
携帯には折原臨也、セルティ・ストゥルルソン、平和島静雄の三件が表示される。まさかこの人たちの名前が私の携帯に入ることになるとは…。
嬉しくてついつい頬が緩む。



「お姉さん!」



一人でニヤニヤしていると後ろから声がかかる。反射的に振り向くと、爬虫類のような鋭い目つきの少年と目があった。



「お姉さん、もしかして一人?よかったら俺とお茶しません?」



自然な動作で私の前にまで来た少年――紀田正臣は可愛らしく微笑んで私の前に手を差し出した。







(お誘い)








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