朝が来た。
まだ働かない頭を抱えながらカーテンを引く。昨日私はどうやって眠るまでに至ったか、思い出そうとしても所々曖昧でよく分からなかった。しかし景色が昨日と変わっていないところを見ると、トリップという平凡の枠を出た出来事が紛れもない事実だということを物語っていた。



「夢じゃないんだ…」



そうポツリと呟けば尚更私の中に重い事実としてのし掛かってくる。悲しいとも寂しいとも言えない感情がお腹の辺りをぐるぐる回っていて、そういえば昨日から何も食べていないことを思い出した。
部屋を出るとまだ誰も起きていないようで、外から聞こえる鳥の声だけが木霊していた。自分の鞄を肩に掛けて、近くにあった紙とペンを手に取り文字を書き上げる。

『お世話になりました。』

紙を机の上に乗せてから私は家を出た。これ以上迷惑をかける訳にはいかない、新羅たちだってちゃんとした生活があるのだから私は私で今あるお金でなんとかしなければ。もう高校生なんだから仕事だって探せばあるだろうし、帰れるまでこっちで仕事を見つけて頑張ろう。
まだ春になったばかりのこの季節は、肌寒いもので上着は欠かせない。自身の上着のチャックを一番上まで締めてコンビニまでの道のりを歩いた。











「ねえ、そこの君」



早朝にも関わらず人が多いこの池袋で、最初は私が話し掛けられていると分からなかった。

見慣れない町ではあるがコンビニなど少し歩けばあるもので、今まで自分が居た場所を見上げるとすごい高級なマンションだったことが分かる。どんな仕事してるんだろうとか考えながら、そのへんにあったベンチに腰掛けた。袋からおにぎりを取り出して口に含む。もぐもぐと咀嚼していると冒頭にあるように声をかけられた。



「もしかして無視してる?」



まさか私に声をかけていたとは思いもしなかったのでそのままおにぎりを食べ続けていると今度は隣から声がした。とっさにそちらを向いてみると、端正な顔が目に入る。



「なんだ、本当に気付かなかったの。早速だけど君ってさ、昨日シズちゃんに吹っ飛ばされた子だよね?」

「…へ?」



突然の出来事に目を丸くしていると、当人――折原臨也は面白そうに笑った。



「ハハ、全く理解してないって顔だね」



そう言って臨也は軽やかに私の隣へと座る。それもそのはず、臨也がまさかこんなにも早く接触してくるとは思わなかった。



「俺の名前は折原臨也。君は?」

「…苗字名前です」

「そう、名前ちゃんって言うんだ。ところでさ、」



臨也はそこで言葉を切ってから立ち上がって、私の真正面に立つ。朝日が臨也の顔にあたってきらきらと深紅の瞳が輝いた。単純に綺麗だと思う(見惚れる程に)。だからこそ、その後にくる言葉を予想出来なかった。



「名前ちゃんって何者?」






(干渉)






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