「さて、自己紹介も終わったところで。そろそろ本題にいこうか!」



新羅はそう言うと先ほどとは違う、もう一つのドアに手を掛けた。まだ誰かいるんだろうか?セルティと一緒にそちらに注目する。



「静雄」



え?と声を出す余裕もなく体が固まった。まさかまさか、静雄なんて名前一人しかいない。そういえば新羅とセルティに会った衝撃で忘れてたけど、私ってどうしてここにいるんだろう、今更ながら疑問が浮かんだ。
そうしている間にガチャリとドアが開き中から予想していた通りの人物、平和島静雄が現れた。静雄はなぜか気まずそうに首に手を当てて、サングラスで見えにくくはあるが下を向いているように思えた。どうして彼はあんな表情をしているんだろう。



「あー…」

「ほら、早く言っちゃいなよ。彼女はよく覚えてないらしいけどさ」

「……」

「なに?言わないの?なら僕から説明してあげようか?」

「いや、いい。自分でする」



新羅と意図が見えない会話をすると、静雄はくるっと私の方に向き直った。そしてまた気まずそうに視線を落としながら低い声で呟くように言う。



「…悪かった」

「え?」



何を言うのかと思えば謝罪の言葉。なんなんだ一体。



「だから…」

「あーややこしいなあ!つまりね、静雄と臨也のケンカに巻き込まれた名前ちゃんは、静雄が振り回したガードレールに吹っ飛ばされて気絶しちゃったってわけ!幸い命に別状はなかったけど、一般人に怪我させちゃったからさすがの静雄もヘコんでるんだよ」

「オイ新羅!」

「なんだい?君が早く言わないからいけないんじゃないか」

「それは……」



新羅が早口でまくし立てると、静雄が怒ったような声を出した。その様子をぼんやり見ながら私は別のことを考えていた。
どうやら私は静雄によって気絶させられたらしい。



「ホントに、すまなかった」



しゅんと効果音が付きそうなくらい落ち込んでいる静雄を見て、なんだか居た堪れなくなってきた。



「気にしないで下さい。そもそも私がぼーっとしてたのが悪いんですし」

「でもよ、そういう問題じゃ…」

「結果的に怪我もしてませんし、平和島さんが落ち込む必要なんてありませんよ」



安心させるように微笑めば、静雄は目を見開いて驚いていた。なにかまずいことでもしてしまったのだろうかと少し不安になりながらも静雄を見つめ続けると、ぱっと視線を反らされる。



「名前…」

「え?」

「だから…その、平和島さんってやつ」

「あ…嫌でしたか?」

「なんか、気持ち悪ぃから…静雄でいい」



目を反らされたことに若干傷つきながらも、続けられた言葉に今度は私が目を見開いた。思わず新羅とセルティの方に目を向けると、なぜか二人共ニヤニヤしながらこちらを見ていた(セルティの表情は雰囲気で分かった)



「あっ!えっと、じゃあ…し、静雄…さん」

「…さんがいらねぇ」

「いきなり呼び捨てなんて、恥ずかしいので無理です…」

「なんで恥ずかしいんだよ。それよりお前は名前なんて言うんだ?」

「名前です、苗字名前」

「名前な。よし、覚えた」



そう言って静雄は私の頭をがしがしと少し乱暴に撫でると、先ほどまでの表情が嘘のように綺麗に笑っていた。さすがスカウトされただけあるというか、すごくかっこいい。思わず顔を赤らめていると、無意識なのか静雄は屈んで私と目線を合わせてから一言。



「もうぜってー危険な目には合わせねぇからな」







(天然?)









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