「あれ、阿部くんじゃない?」

「ほんとだ」



放課後が始まって直ぐグランドに向かったからか、阿部くんともう一人の男子生徒しか集まっていなかった。一瞬野球部が不人気なのかとも思ったが、時間を見てみるとクラスによってはまだHRが終わってないところもあったのでそれは杞憂に終わる。



「阿部くーん」

「待って名前ちゃん!」



千代ちゃんから制止の声がかかったが、時すでに遅く阿部くんはわたしの存在に気がついたようでこちらを振り向いた。



「えっと、同じクラスの…」

「苗字だよ」

「ああ、悪い。苗字な」



ふと隣にいるはずであろう千代ちゃんに視線を移すと、忽然と姿を消していた。あれ?と、辺りを見渡してもそれらしき人影は見当たらない。なぜ!



「どうした?」

「え、あ…うん。一緒にいた友達が見当たらなくて」

「便所にでも行ったんじゃねえ?」

「それならいいんだけど」



ともかく千代ちゃんが心配なので探しにいこうと鞄から携帯を取り出していると、もう一人の男子生徒に声をかけられた。



「ここに来たってことは、苗字さんはマネージャー希望?」

「えっ」

「あ、俺は栄口勇人。阿部と春休みからグランドの整備してるんだ」



にっこり人の良さそうな笑みを浮かべる栄口くんにわたしも微笑んで、「苗字名前です、一応マネージャー希望だよ」と返した。








三人
(千代ちゃんどこ行ったのかな)




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