無事に入学式を終え、次はクラス発表となった。同じ中学の子は一人もいないので、特に緊張することでもないのだけど周りがそわそわしているとどうしても私まで落ち着かなくなってしまう。うるさい心臓を抱えながら自分の名前を探していくと、なんと7組にあった。ラッキーセブンだ、と一人で喜んでいたら後ろから可愛いらしい声が聞こえた。



「あの、あなたも7組?」



くるりと後ろを向いてみれば、ふわふわの栗色の髪が印象的な女の子が立っていた。ぱっちりと大きく見開かれた目に、少々戸惑いながらも笑顔を返す。



「そうだよ」

「わたしも!わたしも7組!」

「一緒だね、わたし苗字名前」

「わたしは篠岡千代、よろしくね名前ちゃん!」

「こちらこそ!」



頬をほんのり染める千代ちゃんを可愛く思いながら二人で一緒に教室へ向かった。新入生独特の浮き立つ空気がひしひしと伝わって、なんだか落ち着かない。教室のドアの前まで来て、開けるのが躊躇われた。千代ちゃんも私と同じ気持ちのようで二人顔を見合わせてから「よし!」と意気込んで扉に手を掛けた。しかしその決意は虚しく、先に扉は開かれてしまった。



「あ、」



千代ちゃんより前に立っていた私は扉から出てきた人と軽くぶつかった。強張っていた体がぐらりと後ろに傾く。やばい、転ぶかもという私の予想は外れ誰かに腕を引っ張られた。



「悪い、大丈夫か?」



瞑っていた目を開けるとたれ目がちな瞳と視線がぶつかる。
こんな至近距離で男の子の顔を見るのは初めてでどうしたらいいか分からない。とりあえず離してもらおうと言葉を発した。



「大丈夫です。あの、ありがとう」



えっと、と言えば意図が伝わったのか男の子は私の腕から手を離した。そのことに安心しつつも意外と強く握られていた腕に気付きもう片方の手でさする。



「阿部くんも7組なの?」



千代ちゃんが不意に声を上げた。
あべくん?この人と千代ちゃんは知り合いなんだろうかと二人を見比べていると、男の子(あべくん)は「まぁな」と答えた後「お前らも?」と聞き返してきた。



「うん!わたしたちも7組だよ!」

「えと、苗字名前です。よろしくね」

「阿部隆也、よろしく」



あべくん、もとい阿部くんは「ちょっと用事あるから」と早々にこの場を去っていった。その後ろ姿を見送りつつ、私たちも入ろうかと顔を見合わせた。






同じ
(鼻大丈夫?)(うん!平気!)


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