その場にいるほとんどが驚きの表情を浮かべていた。
監督の予想以上のバット捌きにあんぐりと口を開けていると、いつの間にか置いてあった大きな袋を漁りだし、甘夏を取り出した。



「待ってね、いま…」



そこで「ジュースいる?」と言っていたことが思い出された。
監督が手に持っているのはジュースではなく丸々とした果実そのもので、まさかとその場からじりじり離れる。



「ふんぬぅあああああああ!!!」



雄叫びとともに両手に持っていた甘夏は握り潰され、そこから絞り出された果汁は机に用意されてあったボール(この場合は容器)に滴り落ちる。
あまりの光景に今度は全員が顔を青くした。



「はいッ!」



何かを達成したような清々しい顔で果汁を入れた紙コップを花井くんに渡すと、花井くんは震えながらも受け取って中身を飲み干した。
それに唖然としていると、監督が私たちに向かって「あなたたちも飲む?」と笑いかけてきたので全力で断った。



「監督、なんかすごい人だね」

「ほんとだね…。まさかの展開すぎて…」



後ろから聞こえた声に咄嗟に反応してしまい、くるりと振り向くと柔らかそうな茶髪に親しげな笑顔が目に入った。
あれ、この人も見た事あるような。



「ねえ、苗字さんだよね?」

「あ、やっぱり同じクラスの」

「うん、俺は水谷文貴!よろしくねー!」



顔はなんとなく覚えていたものの、名前までは思い出せなかったわたしに水谷くんは自分から名乗ってくれるという、なんともフレンドリーな技を見せてくれた。
意外と同じクラスの人居るんだな、なんて思いながら私は水谷くんのことをノートに書き込んだ。






7組
(五人も!)








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