カシャン、と金網が僅かに鳴る音がして、なんとなくそちらに視線を動かしてみれば今朝方会ったばかりの三橋くんがいた。
それぞれが初対面なためか、あまり言葉を交わすことなく黙っていたので、思いのほか静かなグランドに戸惑っているのだろう、不安そうな顔で辺りをキョロキョロと見回していた。

そんな三橋くんを呼びに行こうと足をそちらに向けた途端、三橋くんの背後に迫る影。
今まで男性と話していたはずの監督が、そこにはいた。



「もう一人いたよー!」



怯える三橋くんを強引に引きずってくる監督は見た目通り強気な女性だ。
助けるべきか、そっとしておくべきか迷っていると三橋くんと目が合う。



「あ、えと、…」

「さっきぶりだね、三橋くん」

「苗字、さんっ!」



俺のこと覚えてるかな、忘れてて声かけたらすごく恥ずかしいし…。というような心の声が顔色で全て伝わってきた。そんな三橋くんに笑顔で話しかければ、嬉しそうに呼ばれる名前。かわいいなあ。



「あら、知り合いだった?よかったわね!お名前は?」

「うっいっ、みっ三橋」

「ポジションは?」

「とっ、投手……」


三橋くんの腕からパッと離れてメモを片手に質問を重ねる監督に、たじろぎながらも一生懸命に答える子犬のような彼。



「あら、投手がいたわ!ウチは一年生しかいないの!」

「………へっ」

「今年から硬式になったのよ!私は軟式時代の卒業生で、監督やらせてもらってます百枝です!」



ここで初めて監督の名前が聞けた。百枝監督、というらしい。
一緒にいた男性が顧問の志賀先生。そして志賀先生に抱かれている犬は百枝監督のワンちゃんらしい。



「軽くポジション確認しましょうか!投手の次は捕手、………は阿部くんね」

「はい」

「阿部くんと栄口くんは春休み中から来てます。二人ともシニア出身だから硬球の扱いを教えてもらおうね!」

「よろしくお願いします」

「栄口っすー!」







第一回目の
(ミーティング)









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