※ちっちゃい頃を捏造してます。



かくれんぼをしとった。あてと錦と青と、竜二様と子猫丸と、あの志摩の申ども3人組と。言い出したのは金造で、どうしてもかくれんぼがしたかったらしく、その頃から金造よりも年下やけど周りを気遣う節の強かった竜二様は、金造のかくれんぼしたいコールに賛同した。竜二様本人がかくれんぼを本当にしたかったんかは謎やけども、竜二様がこう言うのだから、あてらも従うしかない。



それからじゃんけんで柔造が鬼になった。隠れる時間は5分。かくれんぼの舞台は割と広い、せやけど家から近い森で、あてらの毎日の遊び場になってるとこやから、あてらの手のうち。隠れるとこはいくらでもある。せやけど、あの柔造に見つからん場所を、必死に必死に考えて―――、それで結果、ここになった。



「蝮ー!!」


「姉様ー!!」



かくれんぼは30分隠れきったら勝ちってことにしとったから、30分以上経った今、あてはみんなに探されとる状態で。………あてだってみんなのとこに行きたい。そんでもって、どうやって胸張って自慢したい。でも。



「っつ………」



ぐいぐい、ぐいぐい。
いくら引っ張っても引っ張ってもとれへん。茂みの中の枝と枝の間に複雑に絡まって、自分の長い長い、頑張って手入れをしとる髪がとれへん。



こんな状況、みんなには知られとうない。特にあの申どもには。絶対笑われる。何やっとんやって馬鹿にされる。早く、早く―――。



そう思っとるうちに、近くの茂みからガサガサという音がした。



「………蝮、」



―――来よった。錦でも、青でも、竜二様でも子猫丸でもない、あの志摩の、しかもあての一番苦手な、柔造が。



柔造はあてを見てすこおし目を見開いとって。奇妙なモンでも見るかのように見られとって、いたたまれんくなったあては、力いっぱい髪を掴んで引っ張る。この際、切れてしもたってかまわへん、さっさとここから抜け出したいという気持ちでいっぱいいっぱいやった。けど。



「阿呆!引っ張んな!!」



さっきまで黙って見とったクセに、いきなり柔造は叫んだかと思いきや、ずんずんと近寄ってきて、あての隣でしゃがみこんだ。それから髪を握るあての手を払って、枝が交差する茂みの中にガサガサと両手を入れて、絡まっとるあての髪をほどく。悔しいことにこいつは器用で(あてが焦っとって出来ひんかったんかもしれへんけど)、あっという間に1回も髪を切ることなく、茂みから髪を解いてみせた。



「………。何、なん。せやろ、阿呆やろ。こんなんなっとって」


「ちゃうわ。お前が無理やり引っ張って解こうとしとったんが阿呆やって思うただけや」



せっかく、そこまで綺麗にしとるんやし。



髪の綺麗な、母様から譲り受けたこの髪。毎日毎日、手入れはかかさんかった。それほど、大事にしとった髪やった。綺麗に伸ばすために毛先をちょこちょこ切ってもろうたりしてはおるけれども、バッサリと切ったことは今までに一度もなかった。せやから、髪が切れることなく解けたことに、すごく安心した。



「………」


「な、何や」


「………。おおきに」



………可笑しいわ。いつもはこの申に食ってかかるあてが、こんなにするりと素直に、おおきに、なんて言えるなんて。どうやらあてだけやなくて、柔造もこれには驚いたみたいで、俯いて目をきょろきょろさせながら、お、おうってぼそっと一言返事をした。



せや。柔造がこう言ってくれたから―――、あては何やかんやで一度も、髪をばっさり切らへんかったんやな………。それで、今に至るんやな………。



障子を開けて任務に必要なモンを取りに来たら、目の前に蝮と、今年2歳になる我が子が俺に背を向けとる状態で畳の上で直に横になっとった。目を閉じとる上に、規則正しい呼吸が2つ聞こえとるから、2人は今、夢の中なんやろう。季節は春。最近この時間帯は暖かこうなってきてはいるものの、畳の上はいくらなんでも痛いやろ、と思いつつも、2人の安眠を妨害する気はない。



足音を忍ばせて2人に近づくと、俺と同じ真っ黒な髪を持つ2歳の息子は、蝮の長く量の多い髪を一房、ギュッと握りしめたまま眠っており、対する蝮も寝てはいるものの、表情が和らいどる。一体、どんな夢を見とるんか、俺には分からへんけども………、俺譲りで、こいつも蝮の綺麗な髪が好きなんやなあって思うと、やっぱりこいつは俺と蝮の子なんやなあて、思わず顔が笑うた。



絡んで解いて繋いで

(そして、一つになる)





Title:空想アリア





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鈴蘭ちゃんからお誕生プレゼントとして柔蝮頂いちゃいましたうへへ^////^嬉しくて鼻血出そうです我が家の家宝にします……幼少期柔蝮可愛いすぎですああああ……!!鈴蘭ちゃん!素敵なプレゼントをありがとうございました^////^!