静雄と臨也(とセルティ)
2011/11/28 23:30

※言うまでもありませんが腐です。
※セルティが静雄の話を聞いてます。臨也は名前しか出てきません。










誰だって大切な人の肌に指先でそっと触れてみたいと思うだろうし、相手の微かな温もりをこの腕の中に閉じ込めてしまいたいと思うだろう。そして仄かに上気した相手の頬に、色付く唇に、口付けを落としてみたいと思うのもまた当然の事だろう。しかし彼は絶対にそれはしないと言った。



そうする事で相手を傷付つけてしまうのが怖いと言ったのだ。俺は化物だから。彼はその言葉を呪っているかのように呟いた。触れられないから。壊してしまうかも知れないから。だから彼は触れる代わりに愛の言葉を囁くのだ。何度も何度も。それこそ飽きてしまうのではないかと思うくらいに。



「愛している、ってな」



なんて陳腐な言葉なんだと笑えばいい、と彼は彼らしくない薄ら笑みをその顔に張り付けて言った。



私は静雄に自らの考えを伝えようとは思わなかった。どうせ伝えなくとも分かっている筈だ。だから、その不器用に見えてストレートな愛情表現が、他の誰でもない臨也にとって最大の幸せであるだろうという、簡単に予測出来そうなことでさえも、黙っていた。