サンヨウ三つ子
2011/03/17 19:39

ちょっと前に書いたsssのアイリスとシャガのデントVer.的な


※ポッド目線








最近、俺の兄弟の様子が変だ。そう、もっと細かく言うとデントの様子がおかしいんだ。


デントは性格上ぼーっとしている事が多い。それは元々なんだが、最近はそれが酷くて、常にぼーっとしてると言うか、何処か遠くを見ていると言うか、マイワールドに意識が飛んでしまっていると言うか。とにかくなんか変なんだよアイツ。


普通の人がデントを見たら特に変わった様子も無いと言うだろうが、三つ子の兄弟である俺なら分かるんだよ。それは同じく兄弟のコーンも感じているようで、ここ数日2人でデントの様子を観察していた。


ほら、今だってデントはじょうろ片手に花が植えられている鉢に水をやっているんだが、やっぱり何処か上の空で、水のあげすぎで植木鉢の下から水が染み出している事にも気が付いていない。いつも植物の世話には凄く神経を使っているあのデントがだぞ?絶対おかしいだろこれ。


事態を重く見た俺達は、デントに直接聞いてみる事にした。


「なぁ、デント」


「…ん?なぁに、ポッド。それにコーンもどうしたの?そんな深刻そうな顔して」


「あなた…最近変ですよ?何かあったんですか」


「えっ…分かる?…僕最近なんかおかしいみたいなんだ。なんかのびょうきかなぁ?」

「おい、病気って何だよ大丈夫なのか?」


「うん……なんかね、胸がもやもやしたかと思えば、急にドキドキしたり、きゅーってなったりとにかく胸がなんかおかしいんだよ。あと、自分でも気が付かないうちにぼーっとしちゃうし……」


え、なんだその病気。胸って言ってたから肺の病気か何かか?残念な事に俺は病気だとかそう言ったものに詳しくは無い。ここは物知りなコーンに任せよう。そう思い隣りのコーンを見やると、コーンは複雑な表情で顎に手を当てて考え込んでいた。コーンの眉間に皺が寄っている。こんな事珍しいな。相当な難病って事なのかデントは。


コーンはしばらく考え込んでから、やっと自分の中で答えが見つかったらしく、突然デントの肩に手を置いてゆっくりと、落ち着かせるように話し始めた。


「デント…よく聞いて下さい」


そのコーンの剣幕に驚いたデントは曖昧にう、うん…とか言って頷いた。思わず俺もごくり、と唾を飲んじまった。デントは悪い病気になってしまったのだろうか。この妙に重い空気が嫌だなぁ。とか思ったのも束の間。コーンの口から漏れた言葉は実に意外と言うか、驚くべきものだった訳で。




「デント…貴方は……誰かに恋をしていますね?」



「…え」


「…はぁ?」



思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。


「冗談を言っている訳ではありません。確かにデントは誰かに恋をしているのです」


最初はぽかんと口を開けていたデントだったが、コーンの言葉の意味を理解したのか数秒後には俺の髪の色みたいに、もしくはそれ以上に赤面した。俺様はと言うと、あのデントが恋と驚愕すると同時に実に真剣な顔で「恋をしているのです」とか言ってるコーンが面白くて笑いそうになるのを必死に堪えていた。


「…ポッド、何笑っているんですか。それよりもデント、貴方の想い人は一体誰なんですか?」


おっと、コーンには俺が笑っていた事は既にお見通しだったらしい。でもラッキーな事にデントが恋しちゃってる疑惑が浮上した今、後でコーンにシバかれる危険性は低いだろう。ふぅ、ひとまず安心。とかそんな事を思っている間にも事態は進んでいて、ニヤリ、そんな効果音がぴったりの笑顔でコーンはデントに詰め寄った。デントの顔は相変わらず真っ赤。本当に分かりやすいなぁ。



「ぼぼぼ僕、こっこ恋なんかししてないよ!たしかにアイリスを見て胸がドキドキしたり、アイリスと話してるだけで、か、顔が熱くなっちゃったりしちゃたりしなくもないけど、けっけけして、恋なんかじゃないからね!ちっ、違うからね!」



デントはそれだけ早口でまくし立てると、よほど恥かしかったのか、ぷいとそっぽを向いてしまった。どうせ俺達から赤面した顔を隠す為に後ろを向いたんだろうが、さすがに耳までは隠せず真っ赤になっているのがはっきりと見て取れた。そんな兄弟が面白くて思わずくすりと笑みを零すとコーンに睨まれてしまった。





…さて、これから俺達は、この兄弟の小さくて大きな初恋を応援してやるとしますか。










***

なんなんだこれは…という事でsssに。

ただ書いてる側としてはものすごく楽しかったです!