デントとヤナップ
2011/06/27 23:47




「さようなら、ヤナップ」



もう君とはこれでお別れだ。これからは自然の中で生きるんだ。



そういい切ったデントは冷たい目をして僕を見下ろしてた。僕がデントと、さよなら?そんな、どうして、なんで…。伝えたい事は沢山あったのに不思議な事に僕は全く動けない。呆然とする僕の横をすり抜けていく足。ああ、デントがいっちゃう、待って、僕をおいていかないで。


「あきらめなよ」


僕がデントに手を伸ばそうとしたら、その手をはたきおとすかのように放たれた言葉。僕は泣きそうになるのを必死に我慢して、声の方へと振り返った。



そこにはポケモン達が沢山立っていた。みんな、僕の事を悲しそうに見つめてた。どうして、どうして、あきらめなきゃいけないの。そう彼等に問い掛けようとした時に気が付いた。


ヨーテリーについた名前の入っている首輪、タブンネについているアクセサリー。そうか、このポケモンたちは。


「僕達は、君と同じように解放されたんだよ」




視界が、世界が、全てが崩れ落ちる音がした。














「…プ……ヤナッ…ヤナップ!!」


デントが僕の事を呼ぶ声がする。どうして…僕は…デントに…


「ヤナップ、大丈夫?」


優しい声と共にふわりと身体が持ち上がる感覚。途端に近くなるデントの気配、日光に照らされた木の葉のような香りが広がる。そっと目を開けると、自然と涙がぽろぽろ零れて弾けた。



あれは…やっぱり夢だったんだね…でも夢にしては本当みたいだった。今でも涙と震えが止まらない。知らなかった。トレーナーを、信頼する人間を失うことが、こんなにも辛いことなんて。



「…ヤナップ、僕は何処へも行ったりしないから」



デントには僕の気持ち、ましてや言葉なんて通じないはずなのに。まるで僕の心を読んだみたいなその言葉。本当はその言葉に返事をしたかったけど、急に嬉しさがこみ上げてきて。僕は一生懸命笑いながら涙を隠す事しか出来なかったんだ。