アイリスとトウコ
2011/05/28 19:34



竜は、とても神聖な生き物で、それでいてイッシュを滅ぼすくらいの強さを持っている。でも、心は全てを包み込む春の風のように優しいんだっておじいちゃんが言っていた。あたしはずっと昔からそんな竜が大好きなの。



だからあたしは、竜の伝説が知りたいと聞いてきたトレーナーに必ずある言葉言う事にしているの。トレーナーさんの竜に対する心を知る為に。竜がイッシュを滅ぼしたというその伝説は、ある意味で人間が争いを起こしたという罪の証でもあるから。



「竜はね、2人の英雄どちらかを選ぶ事が出来なかったから、元々一つだった身体をゼクロムとレシラム、2つの竜に分けたんだよ」



この言葉を言うと、大抵の人は、そうだね、と頷くか、その竜は人を選ぶ事が出来ない程清く優しいのね、だとか、素晴らしい友情だとか感動するだとか言ってくるんだけど、あのおねーちゃんだけは違ったの。



あのおねーちゃんは、あたしの話を聞いて、酷く悲しそうに表情を歪めていたの。凄く辛くて、苦しそうな表情。おねーちゃんはこう言った。



「…竜は…可哀相だよ。きっと竜は、選ぶ事が出来なくて、苦しくて苦しくて仕方が無かったんだと思うの。きっと大好きな人達が争ってとても悲しかったと思うの。」



だから、可哀相




あたしはこの時初めておねーちゃんが他の人とは違う何かを持っている事を悟った。


















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ちょっと分かりにくい文章になってしまったので解説的なものを。



アイリスは竜が好きだからこそ、竜の伝説を知りたいと聞いて来た人間に、争いを起こした人間の為に身体を2つに引き裂くことになってしまった竜(レシラムとゼクロムが1つになった姿)についてトレーナーから直接言葉を聞いてそのトレーナーが竜についてどう思っているか、本当にポケモンを大切にする心をもっているかというのを測っていたという設定です。重いテーマにしたかったのでアイリスの心情の所は敢えて難しい言葉や漢字を使用しています。