創作
2011/04/16 18:44




教卓の前で先生が紙の束を細かく分けて配っていく。当然私の前にもその紙は回ってくる訳で。


ぺらり、配られた紙をめくる。そして当然のようにその紙に乗せられた文字達を辿る。内容はよくあるアンケートだった。



゛あなたの将来の夢はなんですか?゛


ああまたこの質問か。心中でため息が漏れる。


将来の夢はなんですか?、という質問は、将来の夢がある前提の話という事だ。では将来の夢が無い人はどうやって答えたらいいのだろう。将来の夢がありますか?、という質問だったら簡単にNoと答えられるのに。



私はすこし間を置いて考える振りをしてから紙の上にシャープペンを滑らせた。書く事は勿論嘘。本当は嘘を付くのは苦手の筈なのにそれが冗談であるかのように自身の手が握っているシャープペンは嘘をすらすらと書き、並べ立てていく。


こんなんでいいのかなぁ。なんて書きながら思う訳だけど仕方ない。だって無いものは無いんだから。無いものを求められたのなら、嘘を書くしかない。


いつの間にか私の手は作業を終えていたらしい。書き終えた文章を見ると、素晴らしいくらいの嘘が書かれていて私は心の中で小さく笑ってしまった。