自身の手で人を殺した事があるかと問われれば、答えはノーだ。過去に未遂に近いものはあったとしても、所詮は人を操ったまで。自身の手を汚すような事は一切していないし、きっと卑怯な俺はする気も起さないだろう。殺し合いのような喧嘩だって、俺は相手が死なない程度にナイフを振い、適当にお茶を濁しているだけ。そう、適当に。まあ相手が最初からナイフ程度で死なないのが分かってる上で敢えてナイフで喧嘩してるんだから笑っちゃうよね。どこまでも卑怯な奴だ、と俺の愛する人間は皆笑うだろう。人間は俺を愛するべきなのに、酷いよねえ。




本気で殺そうと思った。



いや、夢で見た俺は、そう思っていた。あれは俺であって俺でない。透明な壁の向こうに立つ夢の中の自分は、俺と同じく人間を愛してはいたけれど人の愛し方が違っていた。彼は愛する人を殺し内臓から飛び散った脳、流れ出る鮮血まで自分のものにしてしまう事で愛情を表現していた。相手が自分の手によって息の根を止めた事実に震え、全てを手に入れたつもりになって歓喜していた。それじゃあ殺してしまった人間には愛情は伝わらないというのにとことん馬鹿な奴だ。人間を愛するが故に人間を弄ぶ自分も十分に狂った奴なのかも知れないがこいつはもっと質が悪い。それこそ人間を傷付け子を宿す事で愛情を表現していた罪歌よりも。



俺は大好きな人間を殺す事はしないだろう。それは必然である。まあ殺すだけなら俺にだって出来るさ。相手が人間じゃ無ければね。



「……て訳で死んでよ」



俺は今、とんでもなく胸糞悪くて気持ち悪くて吐き気のするような夢を見て気分が悪いんだよ。シズちゃんには分かる?この気持ち。分かる訳ないよねえ。だって化け物だもの。



俺は人間は殺せないけど化け物の君ならなんのためらいも無く殺せるよ。シズちゃんの為にわざわざ拳銃まで用意したんだから、ねえ。今からこれで君の心臓を何度も何度も何度も何度もそれこそ心臓にばかばか穴を開けて原型が分からなくなるくらいぐちゃぐちゃになるまで打ち抜いてあげようか。あれ、おかしいなあ。俺は自身の手を汚してまで殺しをしようとは思った事無かったし、するつもりも微塵も無かったのにねえ。まあいいや。考えるのも面倒臭い。そういえば何処かの誰かさんが人を殺す時は衝動的にやった方が気苦労が無いとかなんとか言ってたねえ。それってこんな感じなのかなあ。

俺はねえ、人間を弄ぶ卑怯な人間にはなってもいいけど、人間を殺す事で愛情を表現する化け物にはなりたくないんだよ。



言動が矛盾してる?そんな事はないよ。だってシズちゃんは人間じゃないし。大嫌いだし。愛してないし。何故急に殺したい気持ちになったかって言うとただの気紛れってのが一番近いかな。ただ自分の腹の底からふつふつと湧き上がってきた衝動の通りに行動してるだけさ。



それに君を殺してしまえば、俺の事を殺しも出来ない卑怯な奴と笑う人間もいなくなるしねえ。



あはは、なにそれおもしろい。



そんな訳でさよなら、平和島静雄。
















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なんじゃこれ……途中で続かなくて無理矢理終わらせてみたが無理があったな

自分でも何が書きたかったかわからん